2024年3月14日 この範囲を時系列順で読む
折しも、一八九〇年代に急速に近代化した日本は、東南アジアの要所を結ぶ自前の海運会社をもつまでになっていた。密出国者や移住者の乗客が増え、利益を得たのは人買い商人と船会社であった。そして、シンガポールの不衛生な裏通りに閉じ込められた移住者として、からゆきさんは、外貨送金によって日本の経済に貢献することになった。
/『阿姑とからゆきさん』「終章 娼婦たちの人生の再現」
#「大脱走」(企業擬人化)
/『阿姑とからゆきさん』「終章 娼婦たちの人生の再現」
#「大脱走」(企業擬人化)
2024年3月13日 この範囲を時系列順で読む
わたしは本書において、個々の人や集合的な群像について、またかの女らの人生がいかに紡がれたかについて、できるだけ自然にまた愛情をもって語った。まるで、オヨシ、オイチ、ドゥヤ・ハダチやその他大勢の人びとが、一歴史研究者の「屋根裏部屋の友だち」であるかのように。いろいろな意味で、本書に登場する多くの人物には弱点があり、その希望と絶望が固くもつれており、幸せを求めていたにもかかわらず、夢は破れてしまった。逆説的ではあるが、女性たちが跡形もなく記録から抜け落ちたようなとき、かの女らが歴史研究者たちを悩ませる致命的な選択をしたことに、わたしは気づかされた。
/『阿姑とからゆきさん』 「日本人読者への「序文」」
/『阿姑とからゆきさん』 「日本人読者への「序文」」
これも哀れなふねなのだ、とあるぜんちな丸は思った。あるぜんちな丸の妹同様、かつて受けた愛を忘れられないでいる。再びあの愛情を得られないからこそ積極的に捨て去ろうとしている。自ら進んで捨てることで主体性を確保しようとしている。足掻き、苦しみ、悶えている。今持ちえている(ので、あろう)軍艦の威容を誇ろうとする。わが妹とは違い、貨客船新田丸の姿を留めたまま沈没するという栄誉を得ることはなかった航空母艦、冲鷹。
#「海にありて思うもの」(艦船擬人化)
#「海にありて思うもの」(艦船擬人化)
2024年3月9日 この範囲を時系列順で読む
メモの切れ端
からゆきさんが海を越え出したころ、九州を中心に志士と自称した西南の役の敗者の流れを汲んだ人びと(大陸浪人とも呼ばれる)がいて、彼らは「西欧に追従している」政府の人間ではなく新しい君主を求めて清国や朝鮮、露西亜を行き交った。日清戦争から三国干渉にかけてはことに多くの志士が大陸の奥地へ入り込んでいった。こうしてかつて特権階級にあった士族と貧しく村を出るしかなかった娘たちは海外で相見まえる時があった。(「天草灘」『森崎和江コレクション3』)
真偽はどこまで信ずればいいかわからないが、からゆきさんが暗号簿を盗んだり情報を入手したりしていた記録はある。(「天草灘」『森崎和江コレクション3』)
からゆきさんが海を越え出したころ、九州を中心に志士と自称した西南の役の敗者の流れを汲んだ人びと(大陸浪人とも呼ばれる)がいて、彼らは「西欧に追従している」政府の人間ではなく新しい君主を求めて清国や朝鮮、露西亜を行き交った。日清戦争から三国干渉にかけてはことに多くの志士が大陸の奥地へ入り込んでいった。こうしてかつて特権階級にあった士族と貧しく村を出るしかなかった娘たちは海外で相見まえる時があった。(「天草灘」『森崎和江コレクション3』)
真偽はどこまで信ずればいいかわからないが、からゆきさんが暗号簿を盗んだり情報を入手したりしていた記録はある。(「天草灘」『森崎和江コレクション3』)
2024年3月8日 この範囲を時系列順で読む
2024年3月7日 この範囲を時系列順で読む
警備局の人々もそうだけど、MBに難色を示していた評議会(「ホーム」の冒頭に出てきた議員も含まれているはず)も意見を変えているのが「地味にあぶり出る背景」を感じるし、『マーダーボット・ダイアリー』には「地味にあぶり出る背景」が多すぎてそこが魅力的
『マーダーボット・ダイアリー』の「グラシンは『後発組』だ」発言の名称「後発組」は、「冷凍船の後発でやって来た」のではなく、プリザベーション連合の「如何なる存在も受容する」理念のもと、移民・移住民のことを「後発組」の名で呼んでいるのでは…
ラッティたちが先発、グラシンが後発なのではなくて、グラシンは純粋な移民なんじゃないか…と思っているのだがどうだろう 考えすぎか?
マーダーボットが考えているように「強化人間だから疎外感を感じている」のではなく、移民で、おそらく肌の色も(周りが有色人種な中で)明るめで、そこに引け目があるのではないか…MBに人種という考えが希薄なだけで 考えすぎか?
『マーダーボット・ダイアリー』の「グラシンは『後発組』だ」発言の名称「後発組」は、「冷凍船の後発でやって来た」のではなく、プリザベーション連合の「如何なる存在も受容する」理念のもと、移民・移住民のことを「後発組」の名で呼んでいるのでは…
ラッティたちが先発、グラシンが後発なのではなくて、グラシンは純粋な移民なんじゃないか…と思っているのだがどうだろう 考えすぎか?
マーダーボットが考えているように「強化人間だから疎外感を感じている」のではなく、移民で、おそらく肌の色も(周りが有色人種な中で)明るめで、そこに引け目があるのではないか…MBに人種という考えが希薄なだけで 考えすぎか?
「信仰問答」に関して、四五年五月に富田統理と村田教学局長がその内容を内示して諒解をうるため文部省を訪れた時のことである。
その草案の第二問の問い、日本基督教団の本領は何処にあるか、の答として本教団の本領は、皇国の道に則りて基督教立教の本義に基き、国民を教化し以て皇運を扶翼し奉るにあるとあり、さらに第四問の問い、皇国の道に則るとは如何なる意味であるか、の答にはイエス・キリストによって啓示せられ、聖書の中に証示せられ、教会に於て告白せられたる神を信じ、其の独子イエス・キリストを救主と仰ぎ、聖霊の指導に従ひ、心を尽して神と人とに仕へ、以て臣道を実践し皇国に報ずることである。教団はここまで譲歩したのであったが、文部省の教学局長は、次の二つの点を指摘して訂正を要求した。すなわち、一、創造神と天皇との関係現人神である天皇をキリスト教の神の被創造者として神とキリストとの下に置くことは、天皇の神聖を汚して天皇への不敬となる。天皇の神聖を認めなければ、キリスト教の日本化とは言えない。日本化しない宗教は日本では認められない。二、キリスト復活の信仰、復活信仰は幼稚で奇怪な迷信であるから、これを信仰問答から除外せよ。富田と村田はもとよりそうした要求に応ずることはできなかった。二人は真実を吐露して信仰の本質から説いてその意味を説明した。そして「私どもは今日まで日本国民として、心から日本を愛し、日本の非常時体制に即応し協力してきたのだが、信仰の最後の線から退くわけにはいかない。ですから、そこまで仰言るのでしたら、私どもにも最後の覚悟があります」という意味のことを言った。その時二人は心の中で殉教を覚悟していた。教学局長は、その気合いに押されたのか、いくらか折れたで、「では、こちらも考えておくから、そちらでもよく研究してくれ」といった。帰途、二人は「いよいよ殉教かも知れないね」と語り合った。
そして、この問題については文部省からは何の連絡もないままで敗戦となったのである。
一方的に追い立てられ、攻めたてられて、その最後の抵抗線まで破られようとしたその時、教団の執行部は、はじめて「殉教」という言葉を口にしたのである。
/『国家を超えられなかった教会』100頁
その草案の第二問の問い、日本基督教団の本領は何処にあるか、の答として本教団の本領は、皇国の道に則りて基督教立教の本義に基き、国民を教化し以て皇運を扶翼し奉るにあるとあり、さらに第四問の問い、皇国の道に則るとは如何なる意味であるか、の答にはイエス・キリストによって啓示せられ、聖書の中に証示せられ、教会に於て告白せられたる神を信じ、其の独子イエス・キリストを救主と仰ぎ、聖霊の指導に従ひ、心を尽して神と人とに仕へ、以て臣道を実践し皇国に報ずることである。教団はここまで譲歩したのであったが、文部省の教学局長は、次の二つの点を指摘して訂正を要求した。すなわち、一、創造神と天皇との関係現人神である天皇をキリスト教の神の被創造者として神とキリストとの下に置くことは、天皇の神聖を汚して天皇への不敬となる。天皇の神聖を認めなければ、キリスト教の日本化とは言えない。日本化しない宗教は日本では認められない。二、キリスト復活の信仰、復活信仰は幼稚で奇怪な迷信であるから、これを信仰問答から除外せよ。富田と村田はもとよりそうした要求に応ずることはできなかった。二人は真実を吐露して信仰の本質から説いてその意味を説明した。そして「私どもは今日まで日本国民として、心から日本を愛し、日本の非常時体制に即応し協力してきたのだが、信仰の最後の線から退くわけにはいかない。ですから、そこまで仰言るのでしたら、私どもにも最後の覚悟があります」という意味のことを言った。その時二人は心の中で殉教を覚悟していた。教学局長は、その気合いに押されたのか、いくらか折れたで、「では、こちらも考えておくから、そちらでもよく研究してくれ」といった。帰途、二人は「いよいよ殉教かも知れないね」と語り合った。
そして、この問題については文部省からは何の連絡もないままで敗戦となったのである。
一方的に追い立てられ、攻めたてられて、その最後の抵抗線まで破られようとしたその時、教団の執行部は、はじめて「殉教」という言葉を口にしたのである。
/『国家を超えられなかった教会』100頁
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- 「大脱走」(企業擬人化)(20)
- 「渺渺録」(企業擬人化)(13)
- 「海にありて思うもの」(艦船擬人化)(13)
- 『マーダーボット・ダイアリー』(10)
- おふねニュース(8)
- 「蛇道の蛇」(一次創作)(8)
- 「空想傾星」(『マーダーボット・ダイアリー』)(6)
- 企業・組織(6)
- 実況:初読『天冥の標』(5)
- 「時代の横顔」(企業・組織擬人化)(5)
- 今読んでる(5)
- 感想『日本郵船戦時船史』(3)
- きになる(2)
- 『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』(2)
- 「『見果てぬ海 「越境」する船舶たちの文学』」(艦船擬人化)(2)
- 「人間たちのはなし」(艦船擬人化)(2)
- 『青春鉄道』(2)
- 読了(1)
- 「テクニカラー」/「白黒に濡れて」(艦船擬人化)(1)
- 「かれら深き波底より」(一次創作)(1)
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