喫水はまだ甘くまだ浅くある

津崎のメモ帳です。絵ログ、お知らせ、日常など。

2024年1月 この範囲を時系列順で読む

講談社文芸文庫のkindleセールが始まった!!昨日の発言が"振り"みたいに……

結局、若者たちを特攻という運命に赴かせてしまったものは、彼らの美的価値の希求、つまり彼らのロマン主義と理想主義であったのではなかろうか。彼らは読書を通じて自分たちの世界観と美的価値を作り上げた。もし政府が、軍国主義国家の政治的ナショナリズムをあからさまに正面切って提示していれば、若者たちはこれに反抗することができたであろう。

/『ねじ曲げられた桜 上』

感想,引用

"特攻隊員は桜の花に美的価値を感じていた、それが愛国心に通じていることを書き残していた、しかし彼らはこういった象徴が政府のイデオロギーに組み込まれていたことに気づかなかったのではないか、若者らは国への献身に美的価値を見出していたが、国家がそれを利用していたことに気づかなかった"…

感想

『ねじ曲げられた桜 上』に、「ファシズム」という言葉は歴史学と政治学の分野以外では、あまりに「はやり」すぎて、レヴィ=ストロースのいう「浮いている記号」(フローティング・シグニファイヤー。無数の意味付けが可能な記号)となってしまった、と書かれていて
"流行りすぎて""浮いている記号になってしまった"は同人オタクにもあるあるあ~るなんだけど、その事象がこのように形容されているのを初めて見て、快哉を叫んでしまった

感想

講談社文芸文庫きになる。時々Kindleセールをしていて助かる。元々がとても高い文庫なので。

「大脱走」最終話、下描きをしています。2月コミティア新刊ワンチャンないかもしれぬ…そのかわり五月に下巻を出せそうだ。

『われら船乗り―海の慣習と伝説』に住吉明神の社の沖を航走する船はよく逆風にあうという、供物を所望されているからでありご幣を海に投げればよい、それでも風波が収まらない時は船頭や乗客の大切な所有品(例えば鏡など)を海に捨てると順風に乗って船が走り出す、とある。
★「命名に際して、赤ワインが用いられるのは、生けにえの血を流す代わりだともいわれる」←!?
→もともとそんな感じの乗物とはいえ誕生から原罪を被らなくてもよくないか?
→バイキングが好んで奴隷や囚人を人身供養を捧げた、古代アイスランドの神話を歌ったものにも「血染めのローラー」という語句があり、これは新造船の下に引いて転がす丸太材に生贄を繋いだことから来ている、タヒチやフィジーにも同様の習慣があった……
→次第に人間の代わりに動物を使うようになっていった、西インド諸島では今も黒い羊を甲板で殺す習慣はある……とのこと
★禁酒令下のアメリカではジンジャエールだったし、共産圏では赤ワインという資本主義者の飲み物ではなくビールが好まれた、とある
★よく聞く「なぜ船を女性に見立てるのか」話が載っている
「アメリカ海軍の慣習と伝統を集めた本」にある項目に曰く…らしい
①いつも彼女の周囲でてんやわんやの大騒ぎが演じられている
②いつも彼女の周囲に一団の男たちが付きまとっている
③ウエスト(中部甲板)がありコルセット(ステイすなわち静索)を付けている
④見栄えを良くすために紅や白粉(ペイント)が必要である
⑤男性諸君を破滅に導くのは彼女の入手費ではなくて維持費である
⑥満身を飾り立てている
⑦正しく扱うには当を得た男子が必要である
⑧下半身は隠しているが上半身をあらわに出している。そして入港すると必ずボーイ(浮標)のところへ飛んで行く
★ヴェネツィアの演じたアドリア海との結婚はあまりにも童話的すぎている、支配したのはアドリア海、エーゲ海、せいぜい東地中海だからだ、15世紀の大航海時代の幕開幕を考えればアドリア海との結婚は幻想的な見世物でしかなかった…
バイキングのような純粋な海洋民族は、海との間にそのような面倒な手続きなどを必要としなかった、海を恐れない彼らは海に対してもへりくだることはなかった……とあり興味深い 「海に対してへりくだらない」
★ある海外の進水式で、女性が船首に投げた瓶がぶつからず割れなかったので、彼女は盛装のまま水に飛び込み泳いで船を追い、拾い上げた瓶を船首にぶつけて割り直した、とある ふねの命名者としての底意地を感じて良い
★海と人間との調和を破ったのは産業革命だった、とか書かれていていい本だ 帆船の研究者だからかもしれないけど、航空母艦とか戦艦とか貨客船とか漁船とか曳船とか以前の、艦船とも呼び難き、ふね、の話をされている気分になる
★旧版と新版があり、新版は固定レイアウトでよければkindleが買えます。

感想

『HHhH』ではないが、私は金メッキの下から底光りするくらいのレベルの社会性を出したい

あなたの短歌を社会性がないといった人がいたけれど、「アメリカの飛行機ならびここはどこの国の空」などといえば社会性があると思っているのではどうしようもない、素材が何であろうと一首の中の作者の姿勢ですべては判然とするものを、という趣旨のことを中井英夫が中城ふみ子宛の手紙に書いている 

「大脱走」はほとんど「地上戦」になってしまい、視覚的に船要素がないのが少し残念です 次回へ活かす 学び

「永遠のいのち」後日譚を描こうと思ったのだけど、描きたい主題をすこし掴み損ねている
あと「大脱走」最終話は話が決まっているので、後者を早めにキメたほうがいいのかもしれない

岩波新書や岩波現代文庫などで出版される感じの研究書 よく「はじめに」などで「本書(本研究)の目的」が書かれているけど、『飢死した英霊たち』は簡潔に「大量餓死は人為的なもので、その責任は明白である。そのことを死者に代わって告発したい。それが本書の目的である」とあり、特に鮮やかだ。

感想