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2025年5月23日 この範囲を時系列順で読む
もはやなにものにもなれぬ
[※未完成の小説の切れ端]
バン、と音鳴り響いて倒れた椅子はかろうじて壊れなかった。
彼のその怒気迫る表情に身が凍ったのは清澄丸だけではあるまい。
椅子が大音を立てて倒れたのは、愛国丸がなりふり構わず猛然と立ち上がったからである。もともと軽薄な出で立ちが目立つふねであったから、その蛮行には清澄丸だけでなく周りの軍人達も驚き固まっていた。
愛国丸はそんな周りの多少の困惑と嫌悪の視線を気にすることもなく、なんなんだよ、と小さく呻いた。その声を耳に拾えた人間はわずかだった。清澄丸は確かに拾っていた。まるでこの世のすべてを憎んでいるような、低い声色だった。
「……なんなんだよ……。通商破壊なんて……っ、通商破壊なんて、粘り強くやらんと意味がないでしょう!船は一朝一夜で狩れるもんじゃないんだ!そんなこともわからんのですか!」
大日本帝国海軍の特設巡洋艦愛国丸は、通商破壊戦について人間たちに――己の運用者たる乗組員と軍上部に――一言物申したいのだった。否、特設巡洋艦だったもの、か。愛国丸は特設巡洋艦の任を解かれ特設運送船となる。いまがまさにこれからの特設運送船としての任務についての会議だったから、愛国丸もその己の未来と新しい使命とを受け入れていたと思っていた、のだが。
「やれますよ!俺にもう一度軍服を着させてくださいよ!なんでもいいから砲を、……砲を、兵装をくださいよ!」
と愛国丸は身を取り繕うもなく叫んだ。それは半ば悲鳴に近かったのかもしれなかった。特設巡洋艦としての蛮声なのか貨客船としての悲鳴だったのか、それはもう清澄丸には判別はつかなかった。
会議室の空気が急激に冷たくなっていくのを清澄丸は感じた。この状況は危険だ、と清澄丸は思った。乗組員はともかく軍の人間を怒らせることはできない。
立ち上がり彼を制止しようとしたが、彼より背の低い清澄丸が肩を掴む程度で止められるのなら元から騒ぐはずもない。
「愛国丸止めろ、」
「船を狩らせてくださいよ!俺になら出来るんだ!!やらせてください!!」
「愛国丸!!」
後ろから羽交い絞めにして制止する清澄丸をまったく眼中に入れず、しかし強く押し留められた愛国丸は、言葉にならない言葉を呟いてそのまま床に項垂れた。かろうじて聞こえた言葉は「にいさん」と「いまさら」だった。
清澄丸はふと思い出す。船の現身たるこの愛国丸は、特設巡洋艦の擬装を受けるまえは女性の姿をしていた、と言っていたことを。麗しきわが身を今更惜しいと彼は思うのか。そうではあるまい。愛国丸は一度も貨客船としての航跡を往かなかったし、いまさらそんなことに憧れているとも思えない。
「特設巡洋艦なんだ……頼むから……」
彼が憧れていたのは軍服を着続けること、軍隊で地位があること、屠られるよりも屠る側に居続けることなのかもしれなかった。
「落ち着けよ愛国丸……」
[※未完成の小説の切れ端]
バン、と音鳴り響いて倒れた椅子はかろうじて壊れなかった。
彼のその怒気迫る表情に身が凍ったのは清澄丸だけではあるまい。
椅子が大音を立てて倒れたのは、愛国丸がなりふり構わず猛然と立ち上がったからである。もともと軽薄な出で立ちが目立つふねであったから、その蛮行には清澄丸だけでなく周りの軍人達も驚き固まっていた。
愛国丸はそんな周りの多少の困惑と嫌悪の視線を気にすることもなく、なんなんだよ、と小さく呻いた。その声を耳に拾えた人間はわずかだった。清澄丸は確かに拾っていた。まるでこの世のすべてを憎んでいるような、低い声色だった。
「……なんなんだよ……。通商破壊なんて……っ、通商破壊なんて、粘り強くやらんと意味がないでしょう!船は一朝一夜で狩れるもんじゃないんだ!そんなこともわからんのですか!」
大日本帝国海軍の特設巡洋艦愛国丸は、通商破壊戦について人間たちに――己の運用者たる乗組員と軍上部に――一言物申したいのだった。否、特設巡洋艦だったもの、か。愛国丸は特設巡洋艦の任を解かれ特設運送船となる。いまがまさにこれからの特設運送船としての任務についての会議だったから、愛国丸もその己の未来と新しい使命とを受け入れていたと思っていた、のだが。
「やれますよ!俺にもう一度軍服を着させてくださいよ!なんでもいいから砲を、……砲を、兵装をくださいよ!」
と愛国丸は身を取り繕うもなく叫んだ。それは半ば悲鳴に近かったのかもしれなかった。特設巡洋艦としての蛮声なのか貨客船としての悲鳴だったのか、それはもう清澄丸には判別はつかなかった。
会議室の空気が急激に冷たくなっていくのを清澄丸は感じた。この状況は危険だ、と清澄丸は思った。乗組員はともかく軍の人間を怒らせることはできない。
立ち上がり彼を制止しようとしたが、彼より背の低い清澄丸が肩を掴む程度で止められるのなら元から騒ぐはずもない。
「愛国丸止めろ、」
「船を狩らせてくださいよ!俺になら出来るんだ!!やらせてください!!」
「愛国丸!!」
後ろから羽交い絞めにして制止する清澄丸をまったく眼中に入れず、しかし強く押し留められた愛国丸は、言葉にならない言葉を呟いてそのまま床に項垂れた。かろうじて聞こえた言葉は「にいさん」と「いまさら」だった。
清澄丸はふと思い出す。船の現身たるこの愛国丸は、特設巡洋艦の擬装を受けるまえは女性の姿をしていた、と言っていたことを。麗しきわが身を今更惜しいと彼は思うのか。そうではあるまい。愛国丸は一度も貨客船としての航跡を往かなかったし、いまさらそんなことに憧れているとも思えない。
「特設巡洋艦なんだ……頼むから……」
彼が憧れていたのは軍服を着続けること、軍隊で地位があること、屠られるよりも屠る側に居続けることなのかもしれなかった。
「落ち着けよ愛国丸……」
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「アリーテ姫」の冒頭モノローグ、まるで物語の最後に添えるような内容だったので、初見冒頭にして三回ほど再度再生してしまったことを告白する
冒頭モノローグは「その城の姫君は高い塔にひとり籠り、いつか訪れる花婿にふさわしい人のため、世の中の穢れのすべてから遠ざかり、清く、気高いその身を守って、今日も待ちつづけているのだと、人びとの口は、そう言うのでした」なんだけど、もの悲しい音楽も相まってオープニングというよりエンディング感すらある
冒頭モノローグは「その城の姫君は高い塔にひとり籠り、いつか訪れる花婿にふさわしい人のため、世の中の穢れのすべてから遠ざかり、清く、気高いその身を守って、今日も待ちつづけているのだと、人びとの口は、そう言うのでした」なんだけど、もの悲しい音楽も相まってオープニングというよりエンディング感すらある
のちほど小説などをここにも上げようと思います。なるべく統合したいよね…
ついでに「小説」も…
タイトル(「喫水はまだ~」)下に「# 感想」を付けてみました。タグというかカテゴリー「感想」に飛べます
てがろぐのカスタム絵文字、何を登録すればいいのかまるで見当がつかない……
中井久夫が「出来上がった自分の本をひたすら矯めつ眇めつする時期」を「ハネムーン期」と呼んでいたんだけど、じゃあ「同人誌が届くまで気が気でなくて何も手につかない着日当日」のことなんて言うの?「結婚前夜」?
僕はレトロ印刷ともっと仲良くなって船の紙ものを出したいんだ
昔は人体のジの字も考えずに描いていたけど、最近は苦慮しているのでどうにか向上はしている
『天冥の標』紙でも全巻集めたいぞ
読書記録用のてがろぐを稼働させようかな…いやこれ以上てがろぐを増やすのをやめろ、になっている。
いいねボタンポチポチありがとうございます~!
作品ログを見ていて改めて思うのだが、最近漫画をあまり描いていない……。描きたいですね。
作品ログを見ていて改めて思うのだが、最近漫画をあまり描いていない……。描きたいですね。
2025年5月22日 この範囲を時系列順で読む
最近白黒線画ばかりを描いているのは、「そもそも線画の段階でスマートな絵ではない」という事に気付いたためです 試行錯誤です
アツい
2025年5月21日 この範囲を時系列順で読む
縦…40cm……ああ……
2025年5月20日 この範囲を時系列順で読む
ちなみにですが、Wordpressサイトのトップに「24(このてがろぐ)」と「作品ログ」てがろぐの最新の更新が2件ずつ表示されていると思います。あれはRSSを使っています。
Wordpressで挿入できるものに「段落」「画像」「ギャラリー」「スペーサー」などと同様に「RSS」があるので、そこにURLをもとにRSSを調べて、それを挿入する形です。
Wordpressで挿入できるものに「段落」「画像」「ギャラリー」「スペーサー」などと同様に「RSS」があるので、そこにURLをもとにRSSを調べて、それを挿入する形です。
個人サイトはともかく、はてなブログなどはRSSを使って更新を確認しています。
RSSのことはそれこそネットに触れ始めた頃から知っていましたが、それがどんな機能だったのか知ったのは数年ほど前のことでした。
RSSは特定のブログが更新されると通知を受けとることができるものです。
feedlyが一番便利だけど料金が高すぎるので、「Feedbro」というブラウザの拡張機能を使っています。
RSSのことはそれこそネットに触れ始めた頃から知っていましたが、それがどんな機能だったのか知ったのは数年ほど前のことでした。
RSSは特定のブログが更新されると通知を受けとることができるものです。
feedlyが一番便利だけど料金が高すぎるので、「Feedbro」というブラウザの拡張機能を使っています。
このてがろぐは1日ごとに「日付境界バー」が挿入されていて、各投稿に投稿時間だけが表示されています。
①てがろぐの設定>ページの表示>「日付境界バーの挿入位置」>「原則の挿入位置」を「日の境界で挿入」、に設定
②てがろぐのHTML(one-log)で日付のみを消す=時間だけ残す。つまりyyyy-MM-dd HH:mm:ssの、HH:mmだけを残す
とできます。正直このほうがコンパクトに見えて、初期設定より好きだ。
①てがろぐの設定>ページの表示>「日付境界バーの挿入位置」>「原則の挿入位置」を「日の境界で挿入」、に設定
②てがろぐのHTML(one-log)で日付のみを消す=時間だけ残す。つまりyyyy-MM-dd HH:mm:ssの、HH:mmだけを残す
とできます。正直このほうがコンパクトに見えて、初期設定より好きだ。
こんな僻地の個人サイトでいいねボタンをポチ…ポチ…して下さる方 ありがとうございます
pixivに上げれば大丈夫、Twitterに上げれば大丈夫、みたいなもの、いわばプラットフォームの崩壊
閲覧する側としては四苦八苦するんだけど(良作品がいろんなところに分散しすぎ)、上げる側としては四苦八苦に+解放感や若干の安堵はある。統合されているといろんなものが可視化されるのも事実なので……。インターネットは多少面倒で、遅くあったほうがいい
閲覧する側としては四苦八苦するんだけど(良作品がいろんなところに分散しすぎ)、上げる側としては四苦八苦に+解放感や若干の安堵はある。統合されているといろんなものが可視化されるのも事実なので……。インターネットは多少面倒で、遅くあったほうがいい
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2025年5月18日 この範囲を時系列順で読む
あなたは惑星の採掘施設の世襲奉公契約労働者が生涯のすべてを地下生活に捧げているのを見て、森崎和江の『まっくら』を思い出す。彼らの語りと祈りをこの世界の人々に共振させる。神さんにも見つけられん、という炭鉱の深さと暗さ。神さんも坑内のことはつかめんとよ、生きとっても生きとらんのと同じことげなばい。絶望と貧困の連鎖は、かの国のかつての原風景だった。それはこの宇宙のもとの世界でも同様だったのだ。水俣の漁民が侮蔑と羨望半ばに言う「会社ゆき」という言葉は、容易にエレトラの言う経営者という言葉にとってかわった。採掘施設の労働者の妻は地中深い採掘場でよく言っていた。この世界に生まれたのに空が見れないなんて、宇宙に行ってみたい、輝く星とやらを見てみたい、私を包む、蒼く美しい世界を見たい、そう言いながら肺を病み血を吐いて死んだ。あなたは雇用クレジットを貯め続ける人生を放棄し、革命を起こさねばならない。企業人と警備ユニットに怯えてはならない。
#『マーダーボット・ダイアリー』
#『マーダーボット・ダイアリー』
(途中まで観ました)
実際、主人公クンもあそこまで陽気じゃないしな…
「マーダーボット」ドラマ、面白いしソツなく美術化されているので、自分で二次創作する時に影響されすぎないようにしないと…となる
ハアッ ハアッ
マーダーボットどうしよ
理不尽
もっと小説を読まねば、と思うんだけど、小説特有の「余白の解釈」「息づかいを合わせる」が苦手だ。ぜんぶ説明して欲しい。解釈の余地が面倒くさい
いいねボタンポチポチありがとうございます!嬉しいです
2025年5月16日 この範囲を時系列順で読む
「かずきめ」視点が姉→妹→姉→妹→姉…になっているんだね。マジで未成のシスターフッドだ…
李良枝「かずきめ」の一番印象的な一文は「彼女の役は、もし彼女がこの家にやって来なければ、景子が担わされていたかも知れなかった」かもしれない
いちおう新刊はあるので…。
懺悔 最近はコミティアの無配ではなくマーダーボット世界の福祉小説を書いてます。意味が解りませんね。どうにでもな~れ
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- 「渺渺録」(企業擬人化)(169)
- 『マーダーボット・ダイアリー』(33)
- おふねニュース(23)
- 「大脱走」(企業擬人化)(20)
- 「ノスタルジア 標準語批判序説」(二次創作)(18)
- 実況:初読『天冥の標』(16)
- きになる(13)
- 読んでる(13)
- 「海にありて思うもの」(艦船擬人化)(13)
- 企業・組織(12)
- 読了(8)
- 「蛇道の蛇」(一次創作)(8)
- 書籍情報(7)
- 展示会情報(7)
- 「時代の横顔」(企業・組織擬人化)(6)
- 「空想傾星」(『マーダーボット・ダイアリー』)(6)
- 御注文(5)
- 「徴用船の収支決算」(一次創作)(5)
- おふね(5)
- SNSの投稿(3)
- 感想『日本郵船戦時船史』(3)
- 入手(2)
- 『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』(2)
- 「『見果てぬ海 「越境」する船舶たちの文学』」(艦船擬人化)(2)
- 「人間たちのはなし」(艦船擬人化)(2)
- 『青春鉄道』(2)
- 「病院船の顛狂室」(艦船擬人化)(1)
- 「テクニカラー」/「白黒に濡れて」(艦船擬人化)(1)
- 「かれら深き波底より」(一次創作)(1)
ところで私の創作の場合、この「人と人」が男と女であることが少なくないことに気づき、それはそれでどうなのか……異性間に「人間全体のわかりあえなさ」を仮託しているというか
男と女でもいいけど、女と女、男と男が殴り合ったり妥協したり愛し合ったりする話も考えねばならぬ……