カテゴリ「引用」に属する投稿[47件]
2025年8月2日 この範囲を時系列順で読む
2025年7月29日 この範囲を時系列順で読む
[…]
さて、からゆきさんはその苦界を民間外交などとも言って、事実、まことに深部をえぐる外交を心に感じとってきた。それは近親者などへ少なからぬ影響を及ぼしていることを聞き歩きの折々に感じさせられる。が、その体験さえ、侵略戦争とさまざまな形でつながっている。日本が植民地とした朝鮮へ売られ、売られつつなお「日の丸」であったからゆきさんの話をうかがったりもしたけれど、からゆきさんすら一椀のめしを現地の民衆とうばいあう関係のなかにいたのである。
海外にうりとばされ、売春を強要され、身をもちくずして彼の地で果てた少女たちの、その苛酷な生涯に対して、なおそのように言わねばならないところに、庶民の生存と国家の意図との宿敵のような関係がある。それは庶民のナショナリズムそしてインターナショナリズムと、国家のそれとのくっきりとしたちがいが、下層民衆のアジア体験の場に浮き出るからである。
売られることもなく、売春の味も知らずに齢を重ねてしまう私が、からゆきさんと出会うことができる唯一の小道は、彼女らが海の外でアジア諸民族と肌をあわせつつ育てあげた特有な心象世界を、日本への鋭い内部批判として受けとることにある。そしてそれを、彼女らもまたすべての日本民衆と同じように他民族の一椀のめしを叩き落とす存在ともなっていた地点を、見のがしてやるような不遜な立場をつくり出すことなく行うことができるか否か、にある。
/「からゆきさんが抱いた世界」『精神史への旅 3海峡 森崎和江コレクション』
からゆきさんが海をこえだしたころ、九州を中心にして、別の一群がやはり国をではじめていた。志士と自称した人びとである。かれら志士は「諭書」によらずとも、天子サマを君主に奉ずることを生きがいにするナショナリストであった。かれらを大陸浪人とよんだ人もいた。臣としてつかえたい天皇を新政権にひとりじめされて、こころざしをえぬところの、西南の役の敗者たちだった。かれらは波々の身でアジアの現状をしらべて、新君主につくそうとしていた。その意図は純粋で、一般に支配権力に対して野心をもっているわけではなかった。かれらは、政府の政策は、日本をとりまく情況を正しくみていない、西欧に追従していて、国を危機におちいらせるおそれがある、と考えていた。
[…]
次元をまるで異にするこれらふたつのからゆきが、それでも、ふと相まみえたときがあった。海を越えた志士たちは、からゆきさんが働く楼を足がかりにしたのである。
「すすんで志士の世話をし」たと『東亜先覚志士記伝』にある。からゆきさんをかれらは娘子軍とよんだ。
「娘子軍は九州方面の出身の者が多かったが、氷雪肌を劈く西価の購野の奥まで進むに当っても、純然たる日本の服装をなし、僅に一枚のショールを纏うて寒さを凌ぎつつ突進するのが常であった」(『東亜先志士記伝』)
/「天草灘」『精神史への旅 3海峡 森崎和江コレクション』
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年7月25日 この範囲を時系列順で読む
/『八幡製鉄所・職工たちの社会誌』
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年7月21日 この範囲を時系列順で読む
2025年7月17日 この範囲を時系列順で読む
/「からゆきさんが抱いた世界」『森崎和江コレクション3』
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年7月15日 この範囲を時系列順で読む
/「「戦争責任の追及」ということ」『「沖縄」に生きる思想』
2025年7月13日 この範囲を時系列順で読む
仲間のうちの二人が、禁固刑が待っているというのに、ハンガリーへ戻っていった。別の二人は、これは若い男で独身だったが、もっと遠くへ、米国へ、カナダへ行ってしまった。また別の四人は、それよりもさらに遠くへ、人が行けるかぎりの遠い場所へ、大いなる境界線の向こう側へ行ってしまった。わたしの知り合いだったその四人は、亡命生活の最初の二年のうちに、みずから死を選んだのだ。一人はバルビツール酸系の睡眠薬で、一人はガスで、他の二人はロープで首を吊って死んだ。最年少の女性は十八歳だった。彼女の名前はジゼルだった。
/アゴタ・クリストフ『文盲』
#「ノスタルジア 標準語批判序説」(二次創作)
2025年7月11日 この範囲を時系列順で読む
/「感受性の変容」『情念の力学』
2025年7月8日 この範囲を時系列順で読む
/『撃沈された船員たちの記録』
#「渺渺録」(企業擬人化)
/『村野藤吾建築設計図展カタログ6』
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年7月4日 この範囲を時系列順で読む
/『図説日本の歴史 42 長崎県の歴史』
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年7月1日 この範囲を時系列順で読む
[…]
記憶がすべて。失われたものに直面してわきおこる切望。その欠落を維持する。直線的な進歩の記号としてではなく、月の満ち欠けのようにくり返し盛衰する不確定なものの間に固定されて。それ以外はすべて歳を取る、時のなかで。ただし。ある者たちは時の外部に。
/「クリオ 歴史」『ディクテ 韓国系アメリカ人女性アーティストによる自伝的エクリチュール』
2025年6月29日 この範囲を時系列順で読む
/『外地巡礼』
2025年6月27日 この範囲を時系列順で読む
近年、旧軍関係者が自衛隊の現職を去り、また実戦を体験してきた人も老齢には勝てず、いよいよ自衛隊も全く未体験の軍事集団になってしまった。体験・実験の難しい軍事を専門にする我々幹部自衛官にとって、実戦を学ぶ教材として残されたのは戦史以外にないといっても過言ではない。いよいよ腰を据えて戦史を勉強する時が来たと思う。
まったく違った理由からではあるが、私も白石と危機感の一部を共有する。戦争体験世代が減少するなかで、現在の日本社会では、戦争の現実、戦場の現実に対するリアルな想像力が急速に衰弱しているように感じられるからである。
/吉田裕『アジア・太平洋戦争 シリーズ日本近現代史6』
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年6月26日 この範囲を時系列順で読む
「なんば言うか、ケタクソわるい」と閉山町の日雇い人夫は言うだろう。それでも時代は確実にそのように動いてきた。結婚すれば大それた迷いはなくなるという庶民の、父祖伝来の教えは、そのまま一面では生きつづけてマイ・ホーム主義は建築産業の開発から日本列島改造論へと表裏一体である。経済基盤を固めた戦後民主主義は、結婚しても迷いはなくならない、というヒネクレ者にも寛大となって、「それはあなたの自由です。あなた自身の生活を十分に主張してください」と言う。
/「戦後民主主義と民衆の思想」
戦後はこのようなはじまり方をしていいはずのものではなかったのである。
/「戦後民主主義と民衆の思想」
2025年6月17日 この範囲を時系列順で読む
/『造艦回想』
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年6月16日 この範囲を時系列順で読む
/清田政信『情念の力学』
※沖縄について
2025年6月14日 この範囲を時系列順で読む
/『二引の旗のもとに』
#「渺渺録」(企業擬人化)
日本にとっては、生糸輸出で獲得した外貨によって軍需品や重工業製品を輸入するというパターンができ、「生糸が軍艦をつくる」とまでいわれるほどでした。製糸業が富国強兵に大きく貢献したことは間違いありません。
/『富岡製糸場と絹産業遺産群』
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年6月11日 この範囲を時系列順で読む
みずから生徒を死に追いやったとする著者の自責と慟哭は美しい。「生きるも死ぬも、ただ偶然であり、ぎょうこうであった」ということばのうちに秘められる無限の悲しみは、あまりに美しすぎる。文体のリズムまで支配しているかにみえる著者の倫理的な美しさは、死んだ生徒の魂を「浄魂」ととらえる視点にまであらわれている。
あまりに美しい。だがそのあまりの美しさに、私はかすかないらだちを感ずる。今まさにベトナム戦への加担者として生きている私(たち)が、それを余儀なくさせている沖縄の状況にたちむかうとき、このような美しさは、私(たち)からある種の凶暴な怒りを奪いさるのだ。はかなく、もろいこの種の美しさは、その美しさの故に私(たち)を魅きつけ、心を奪いさる。そしておそらく殺戮者は、そのような美しさを喜びむかえるにちがいないのだ。だから、私は、このような美しさを心から拒否したいとねがっているのである。
/『「沖縄」に生きる思想』「「ああ、ひめゆりの学徒」を読んで」
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年6月10日 この範囲を時系列順で読む
/「北九州労働者風景」『ははのくにとの幻想婚』
#「渺渺録」(企業擬人化)
/『石炭の文学史』
#「渺渺録」(企業擬人化)
2025年6月9日 この範囲を時系列順で読む
/『沖縄・問いを立てる3 攪乱する島 ジェンダー的視点』「攪乱する島」
/『沖縄・問いを立てる1』「座談会 沖縄の現実と沖縄研究の現在をめぐって」注釈
2025年6月1日 この範囲を時系列順で読む
/小林秀雄の手紙(神奈川近代文学館所蔵)
「小林秀雄の戦争と平和」【1】八月十五日以後、小林秀雄の「沈黙」と「戦後第一声」①
2025年5月26日 この範囲を時系列順で読む
/『傷のあわい』「移民候補生」
2025年5月15日 この範囲を時系列順で読む
/「帝国の養女の里帰り」
2025年1月20日 この範囲を時系列順で読む
2024年11月5日 この範囲を時系列順で読む
/『企画展示図録 性差(ジェンダー)の日本史』
2024年10月23日 この範囲を時系列順で読む
/藤井たけし「帝国の養女の里帰り」
2024年10月5日 この範囲を時系列順で読む
/『亡命文学論』
村野は大学を卒業して一年後の、1919年(大正8)、『様式の上にあれ』と題した論文を建築雑誌に発表し、自分の将来の設計活動の根幹となる考えを表明した。彼はそのなかで、近代人は、「如何なるが創造的進化の落処かを知るに苦しむもの」であるとし、したがって人類の確実な到達点としての明確な「未来」を見いだせないのと同時に、逆に美しく回想してそこに逃げ込む事のできる「過去」もまた喪失しているとした。かくて近代人はいわば「現在」に閉じ込められ、そこからどこへも逃げ出せず、「現在」を生きていく以外にない、というきわめてニヒリスティックな世界観を、ベルグソンの学説などを借りて提示した。
[…]
ところで海上を旅する旅客船は、すでに出発港を一つの「過去」として置き去りにし、他方で目的としての港を「未来」として予定しながらも「現在」を洋上の《点》として航海している。したがって「現在」を共に生きる者の一つの疑似的な共同体もしくは社会を構成しながら航行している、とも考えることができる。その意味で一隻の船舶は、村野の目にとって、いわば近代社会のモデルであり、それが現在に共に生きる者たちの世界を発端に具象化するものに映ったとしても不思議ではなかった。
/長谷川尭「船――現在を生きる者たちの世界」『艤装の美 村野藤吾建築図面集 第8巻』
/『亡命文学論』
#「『見果てぬ海 「越境」する船舶たちの文学』」(艦船擬人化)
2024年9月26日 この範囲を時系列順で読む
そして、その長崎を支えたのは、やはり三菱だった。日清戦争後に政府が造船業の発達を促すなかで、長崎造船所は、一般の船舶とともに日本海軍の艦船も積極的に受注し、建造した。
/『見る・知る・考える 明治日本の産業革命遺産』「三菱と長崎の近現代史」
#「渺渺録」(企業擬人化)
2024年8月15日 この範囲を時系列順で読む
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2024年4月2日 この範囲を時系列順で読む
205 組織化された日本人女性の売買は、一八九〇年代のはじめに三菱の設立した日本郵船が新航路を開設し、寄港地が増えたのにともない、さらに拡まった。
209 口之津出身のある老女は、生々しい感情がこもる、鮮明な記憶にもとづいて、生まれ育った世界から地獄に突き落とされたこと、船員の目を盗んで、船から、地獄から必死で逃れようとしたことについて回想している。
/『阿姑とからゆきさん』「第9章 人身売買」
#「大脱走」(企業擬人化)
#「渺渺録」(企業擬人化)
2024年3月20日 この範囲を時系列順で読む
/「つぐ」(前編)『短歌研究 2022年4月号』
薬莢によう似たそれを磨くとき祈りも削がれてまうでかんぎゃあ
権力と煙はどっちが先やろう この先も私は煙草を吸わへんやろう
/「つぐ」(中編)『短歌研究 2022年8月号』
出征兵が豪雨みてゃあに征ってってみんな日の丸まるめ始める
/「つぐ」(後編)『短歌研究 2022年11月号』
2024年3月18日 この範囲を時系列順で読む
ジェームズ・フランシス・ワレン『阿姑とからゆきさん』「日本人読者への「序文」」
#「渺渺録」(企業擬人化)
2024年3月14日 この範囲を時系列順で読む
/『阿姑とからゆきさん』「終章 娼婦たちの人生の再現」
#「大脱走」(企業擬人化)
#「渺渺録」(企業擬人化)
2024年3月13日 この範囲を時系列順で読む
/『阿姑とからゆきさん』 「日本人読者への「序文」」
#「渺渺録」(企業擬人化)
- 「渺渺録」(企業擬人化)(167)
- 『マーダーボット・ダイアリー』(33)
- おふねニュース(22)
- 「大脱走」(企業擬人化)(20)
- 「ノスタルジア 標準語批判序説」(二次創作)(18)
- 実況:初読『天冥の標』(16)
- きになる(13)
- 読んでる(13)
- 「海にありて思うもの」(艦船擬人化)(13)
- 企業・組織(12)
- 読了(8)
- 「蛇道の蛇」(一次創作)(8)
- 書籍情報(7)
- 展示会情報(7)
- 「時代の横顔」(企業・組織擬人化)(6)
- 「空想傾星」(『マーダーボット・ダイアリー』)(6)
- 御注文(5)
- 「徴用船の収支決算」(一次創作)(5)
- おふね(5)
- SNSの投稿(3)
- 感想『日本郵船戦時船史』(3)
- 入手(2)
- 『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』(2)
- 「『見果てぬ海 「越境」する船舶たちの文学』」(艦船擬人化)(2)
- 「人間たちのはなし」(艦船擬人化)(2)
- 『青春鉄道』(2)
- 「病院船の顛狂室」(艦船擬人化)(1)
- 「テクニカラー」/「白黒に濡れて」(艦船擬人化)(1)
- 「かれら深き波底より」(一次創作)(1)
/『きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする』