そのとき蛾の体温はほぼ乳頭や海豚や全力で泳いでいる鮪と同じ温度、三十六度になっている。三十六度というのは、自然界でいちばん適切な温度だということがわかっているのだよ、アルフォンソはそう言いました。神秘的な閾値といってもいい。わたしはこんなことを思ったことがあるんだ、ひょっとしたら人類の不幸は、いつのころからか体温がこの基準度からずれてしまって、しじゅう少し熱っぽい状態にあることと関係があるのではないだろうか、アルフォンソはそう語ったのです、とアウステルリッツは語った。 /『アウステルリッツ』 引用 2025/10/06
/『アウステルリッツ』