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喫水はまだ甘くまだ浅くある

津崎のメモ帳です。絵ログ、お知らせ、日常など。最下部にカテゴリー・タグ一覧あり。

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No.2769

 二、三日後アメリカが崖の上まで来た。出て来い、出て来いという。海には汽船が浮いていて、マイクで、出てこい、出てこい、という。そして水陸両用戦車がすぐ近くまで来る。もう絶対絶命ですよ。だから兵隊たちは、一般民は早く出て行って下さいというんです。一般民には何もせんはずだから、といってすすめるんです。兵隊が相当いましたよ。そうして二十日すぎからは、自決する音がきこえるんです。手榴弾を炸裂させてね、やるんです、自決。
 わたしは最後はね、一つの穴に県庁職員も入れて十二名おりましたよ。それでわたしが手榴弾一箇持っている。軍刀持っている。そのほかに手榴弾持っているのがおる。小さな穴ですからね、手榴弾二つでは全員即死できる。自決するか、最後の評定を開きましたよ。この十二名、死のうと思えば、手榴弾二箇で大丈夫だが、やるか。ところが人間最後になれば考えますよね。それで結局評定の結果は、一応出て見よう。そうすれば、何かまたやる機会が出るかもしらんから、一応手を上げて出て見よう。それで手榴弾を捨てたんです、軍刀もね。
 そしてわたしが出たのが六月二十二日、昼だな。十二名、(恥かしいなぁ)ハンケチを振って出ましたよ。上って行ったら、西がわに低いところがありましたが、そこから上って行った。それで米兵につれられて畑の道のところでしらべられた。男は全員裸で、女は三名いたがモンペーでそのまま。男は褌一つ。
 その時見た死体。わたしは、沖縄に人間がこんなにいたかな、というぐらいの死体でした。一体沖縄に人間が何名残ったかなと思った。ほんとに屍屍累累とはあれでしょうね。それで屍体が何日かしたら、こんなに膨張れるでしょう。水ぶくれや、土左エ門というけれども、もう(そこでは声が非常に感情を昇らせて言われた)陸の屍体は、紫色になって、膨れてね、物すごく大きくなるんです。腐敗寸前は。悪臭が鼻をつく。


/『沖縄県史 第9巻 (各論編 8 沖縄戦記録 1)』「旧那覇市」嘉手納 宗徳 754p

引用

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