喫水はまだ甘くまだ浅くある

津崎のメモ帳です。絵ログ、お知らせ、日常など。

No.588

1「ロービジ・ハラスメント」

#「人間たちのはなし」(艦船擬人化)

 私の艦はアットホームな雰囲気のあるとても良い潜水艦ですよ!潜水艦部隊はどの艦も結束力が強いと言われていますが、私の乗っている潜水艦は殊更仲が良く、雰囲気も良い気がします。明るく冗談が飛び交うし。陸に上がったときもよく一緒に呑みに行ったりもします。艦内に「イケメン部」なんてものもありますね。私は所謂「イケメン」ではないので、どんな部なのか詳細は知りませんが……。
 B1バースから吉倉桟橋方面を見ていると、最近は艦番号がロービジになった艦が増えてきましたねえ。我が潜水艦部隊には全く関係のない話なんですけれど(笑う)。とはいえ長らく白色だった艦番号が変わっていくのは潜水艦たちも感慨深いと思っているのか、時たま彼らがロービジを話題にしているのを聞きます。この前は私の乗っている潜水艦こくりゅうが、水上艦艇たちの間で「ローハラ」なる言葉が流行っていることを教えてくれました。「ロービジ・ハラスメント」です。どうやらロービジ艦がロービジになっていない艦に対して、ロービジになっていないことを揶揄することを指す言葉らしく……。まあローハラが艦艇社会で社会問題になっているというよりも、それはローハラよぉ~!なんて冗談を言いながらお互いふざけている感じらしいです。「行き遅れ」とも揶揄されているらしいですが、どこに行ったつもりなんでしょう……。尋ねたところ「ドックに行き遅れ」という非常にストレートな答えでした。「へぇ、人間にはない感覚だ、艦艇たちの考えることはおもしろいなぁ」と彼に言ったところ、「いやそんなことで騒ぐのは水上艦艇部隊だけですから」とバッサリ切り捨てられてしまいました。
 あとはアメリカの艦艇たちが自衛艦に対して「どの艦番号がホワイトのままなのか」を賭けているらしく、こくりゅうもそれに乗じて賭けてしまったそうです。こくりゅうは自衛艦なのでアメリカ勢より情報の面で有利なはずですが……。そこは報酬の軽重で補っているとのことでした。
 アメリカ艦艇たちにはドルで賭けるのか円で賭けるのか問うたところ、CoCo壱番屋でカレーをおごってもらうのが賭けに勝った時の報酬らしいです。艦艇情勢は複雑怪奇なりですねえ……。

(第二潜水隊群基地にて 平沼一季 一等海曹)

小説,艦船擬人化