喫水はまだ甘くまだ浅くある

津崎のメモ帳です。兼ログ置き場(新しめの作品はここに掲載してあります)。

No.151

感想『三池炭鉱「月の記憶」 そして与論を出た人びと』
森崎和江の「ある帰郷」(『森崎和江コレクション 精神史の旅 3 海峡』収録)というエッセイで与論を出た人びとを知り、興味を持ったので読みました。与論の人たちについてまったく知らなかったので、先行研究がいくつかあることに驚き、また知らなかったことを恥じ入りました。
差別される人間が差別をし、差別される人間が差別して……という重層は、水俣での「朝鮮人を牛馬のように使う者たち自身が、水俣では牛馬のように使われていました」(姜信子「葬るな人よ、冥福を祈るな」『現代思想 石牟礼道子』)との記述を彷彿とさせます。ただ、与論の人びとは時にその朝鮮人よりも給料や待遇が低かったことがこの時代の複雑さを物語っています。また与論の人びとも朝鮮人を下に見ていたらしい。もしかしたら朝鮮人も与論の人びとを下に見ていたかもしれません。
三池炭鉱の由来は囚人の強制労働から発し、その根幹をずっと抱えてきたという指摘と、炭坑の不正に対して「地下だから、見えないから、何でもできる」と評していたのが印象的でした。
『三池移住五十年の歩み』等は国会図書館デジタルコレクションの送信サービスで閲覧可能です。
三井船舶の生きた時代の三井三池炭鉱の話です。
2023-08-20読了

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