あなたはグラシンが苦手だ、と感じている。いや、はっきりと嫌いだ、と思っている。彼の屈強そうな身体は、自分の上を走り去っていった多くの男たちを思い出すからかもしれない。(彼の無愛想さと不寛容さは、きっと紙一重に違いない。)あるいは強化人間という技術を、彼の自分への加害手段だと感じてしまうのかもしれない。そういう被害妄想に浸る自分が一番嫌になるからなのかも。そして、彼のような、人間という身分があって、技術があって、強く、円満な人間を、他者というものを、羨ましく、また憎いと思っている自分に気づいてしまう。あなたは、わたしに害を加えられる技術があればなあ、と思う。わたしが人間だったらな、と感じる。屈強な男だったら、とも。 グラシンも一度、あなたに靴を贈ってくれて、それはあなたの部屋の一番奥、手の届かない場所にしまいこまれている。あなたはそのことについて何も言わないし、グラシンもそれに触れない。 #「空想傾星」(『マーダーボット・ダイアリー』) #『マーダーボット・ダイアリー』 文章(全て)小説(&フィクション的文章)二次創作 2025/03/18
グラシンも一度、あなたに靴を贈ってくれて、それはあなたの部屋の一番奥、手の届かない場所にしまいこまれている。あなたはそのことについて何も言わないし、グラシンもそれに触れない。
#「空想傾星」(『マーダーボット・ダイアリー』)
#『マーダーボット・ダイアリー』