settings

喫水はまだ甘くまだ浅くある

津崎のメモ帳です。絵ログ、お知らせ、日常など。最下部にカテゴリー・タグ一覧あり。

👏 #感想 #小説など
#船擬 ##マダボ ##渺

良い…と思ったらぜひ押してやってください(連打大歓迎)

No.1309

国家主義は現代の毒である。それはヨーロッパを破滅の淵に追いやってしまった。それはアジアとアフリカのあたらしい国家をレミングのように駆りたてている。おれはガーナ人だ、ニカラグア人だ、マルタ人だと宣明することによって、だれもが、わずらわしさのふりかかるのをまぬがれているのだ。自分が何者であるか、自分の人間性はどこにあるのか、ということをあきらかにする必要はないのだ。武装して、一糸みだれぬ一隊のひとりとなるのだから。現代政治のすべての徒党衝動が、すべての全体主義的な意図が、国家主義を食って、壁のむこうから一〇ヤードもはなれた荒れた土地のむこうから人間に歯をむかせる憎悪という麻薬を食ってふとっている。たとえそれが、自分の迫害された意志を、自分の倦怠感を破るためであろうとも、ユダヤ人は――というか、すくなくともユダヤ人のいく人かは――みならってよいような役割を演じることができるかもしれないのだ。木には根があるけれど、人間には脚があるのであり、おたがいの賓客であるということを示すことが。もし文明のかくれた力が破壊されることをのぞまないのなら、わたしたちは、もっと複雑な、もっと慎重な愛国心を発展させなければなるまい。
/ジョージ・スタイナー「ある意味での生きのこり――エリ・ヴィーゼルに」『言語と沈黙』 

引用

expand_less