喫水はまだ甘くまだ浅くある

津崎のメモ帳です。兼ログ置き場(新しめの作品はここに掲載してあります)。

No.329

教会堂は徴用され信徒たちも応召し、また九州や台湾に疎開し、牧師も疎開の引率者、徴用、戦火を避けて、軍に睨まれていることを知って犬死したくないと沖縄を去った、ある者は戦場に消え、ある者は土竜のような生活で生きのび、ある者はスパイ容疑で殺され、少なくない者が栄養失調やマラリアで死んだ。
戦争が終わった時には教会は跡形もなく、会堂は戦火で破壊され尽くされていたし、生きのびた信徒は他の生きのびた信徒の行方も知らなかった、強制疎開、徴用もあったから逃げることは悪ではなかった、にも関わらず、教会が下した「判断」とそこから起こった状況への対応に問題を感じる。
というのは、沖縄の教会の問題は他府県出身の牧師たちが引きあげたからだと考えていたが、その中には沖縄県出身の牧師もいた、また戦火で信徒が全滅したわけでもなかった、沖縄の教会は、迫りくる戦争と疎開政策の中で為された教職と信徒の「決意と行為」によって、自然消滅したのである。…

という意味合いの『国家を超えられなかった教会』の文章、ここまで冷静に挫折を語る文章はまたとない。

感想