喫水はまだ甘くまだ浅くある

津崎のメモ帳です。兼ログ置き場(新しめの作品はここに掲載してあります)。

No.155, No.154, No.153, No.152, No.151, No.150, No.1497件]

映画「風立ちぬ」
・「風立ちぬ」の最終部の煉獄の野原、で二郎が飛行機の墓場を仰ぎ見上げるシーン あまりに良く、私のなかで戦時期の演出の美の極致なんだけど その「良さ」がなんとも言語化しづらい
・私があのシーンを作ったら、最後は野原を下るだけになってしまうと思う あの瞬間の二郎の気持ち(=狂おしい未練)に思いが行き届かないので あとあれ天国を見上げながら地獄の方へ降りていくということかしら(そういう意味でもあの野原は煉獄)
・『風立ちぬ』のカプローニと二郎少年の夢での邂逅、『アンダーグラウンド』の死んだはずの者たちの宴のフィナーレ、『タイタニック』のローズを迎える沈んだはずの乗客たちとジャック そういう「この世のどこでもない余白の世界」が大好き

感想

「ハリー・ポッター」シリーズ再履修の記録
・スネイプとダンブルドアの共犯関係、共犯関係の手本のような共犯関係
  ・「再」なので結末は知ってるんだけど、スネイプとダンブルドアの共犯関係の形式美がすごいよな~と思う。「目的達成のためには殺し殺される関係すらも互いの了解の元で自分たちの姦計とする」関係、至上の共犯関係だ……。
  ・殺し殺される関係すらも互いの了解の元で自分たちの巧妙な姦計とする、これが最大の共犯関係じゃなくてなんだというのだろう
  ・殺し殺される関係すらも互いの了解の元で自分たちの巧妙な姦計とする共犯関係 ありそうでなかなか見ないかも 児童書にしては性癖を拗らせすぎなんだよな
  ・共犯関係というと「死体を埋める」しか知らなかったけど、「目的達成のためには殺し殺される関係すらも互いの了解の元で自分たちの姦計とする」という視点は欠如していた
    ・共犯関係のことをよく「死体を一緒に埋める」と呼んでるんだけど、「片方を死体にすることも目的の達成手段のうち」関係はさすがに考慮してなかった
・まあダンブルドアは死ぬのが決まっていたし、その死をなるべく苦しまないように終えたいという、ある意味利己的であり目的達成のためだけの死ではなかったのだけど。でもあの殺人はスネイプを闇の陣営に振り戻すには好都合の演出だったわけで……。いやホントすごい。児童書じゃないだろこの拗らせ方……。
・いやダンブルドアとスネイプの感情デッカ……… じゃなかった両者がデカい感情を向けているのはハリーに対してであって、両者の関係は彼の身の保全という姦計をめぐらす共犯関係なので
  ・スネイプはダンブルドアが天国に行ったら同じ天国で、地獄に行ったら同じ地獄で再び相見合う宿命だし、どちらかというとどちらも同じ煉獄で、永劫に天国にも地獄にも行けなく佇んでそう
・あまりに多くのものを破滅させたのはヴォルデモート卿だけではないのだ、というダンブルドアへの理解

感想 「ハリー・ポッター」と極致の共犯関係

感想

感想「さらば、わが愛/覇王別姫 4K」

なんとなく戦時下の京劇の映画くらいまでしか知らなかった。のですこし後半にはびっくりしてしまった。が、この映画の本番はその後半、文化大革命あたりの話だったようにも思える。

京劇も蝶衣(レスリー・チャン)美しいのだけど、その美しさ自体よりも、その美しい時代が過去のものとなり、新しく生まれた世代にも古き体制だと馬鹿にされ、あげつらわれ、だんだんと美しくないものが社会的に「美しい」ことになっていくさまが興味深かった。小四への体罰とか、根性論とか、完全にから回っている描写が印象深い。
世代間の断絶がすさまじく、その断絶への悲しみ、また共産主義体制への怒りを感じた。1993年公開、イギリス領香港での制作とのことだが、それでもここまで嫌悪感を描けるのは凄い。中国への好意と嫌悪感。また同じく日本と日本人への当たり前の嫌悪を発露、罵倒をするが人間的尊敬も忘れない。
今回は4Kバージョンの映画を観た。
2023-08-06 観了

感想

感想『造船記』
主に年齢や精神的未熟さもあって「東日本大震災を精神的に通過できなかった」人間なのですが、改めて写真を見ると膨大な被害があったことが理解できます。
人間も多く亡くなっていますが、『造船記』とあるように船にも焦点が当てられ、波に呑まれて廃船となった船も多く出てきます。フィクションにおいて人間の死には多く慣れ親しんでいるものの、フィクションにおいて船の死を見ることはあまりないので(見ていて苦しくなったのは不染鉄「廃船」くらいしか思い出せません)、ノンフィクション、現実において船の死を見ることはなかなかインパクトがありました。船、こうやって死ぬんだな……。
静かだけれど力強い東北の造船所を知ることができました。
2023-08-20読了

感想

感想『三池炭鉱「月の記憶」 そして与論を出た人びと』
森崎和江の「ある帰郷」(『森崎和江コレクション 精神史の旅 3 海峡』収録)というエッセイで与論を出た人びとを知り、興味を持ったので読みました。与論の人たちについてまったく知らなかったので、先行研究がいくつかあることに驚き、また知らなかったことを恥じ入りました。
差別される人間が差別をし、差別される人間が差別して……という重層は、水俣での「朝鮮人を牛馬のように使う者たち自身が、水俣では牛馬のように使われていました」(姜信子「葬るな人よ、冥福を祈るな」『現代思想 石牟礼道子』)との記述を彷彿とさせます。ただ、与論の人びとは時にその朝鮮人よりも給料や待遇が低かったことがこの時代の複雑さを物語っています。また与論の人びとも朝鮮人を下に見ていたらしい。もしかしたら朝鮮人も与論の人びとを下に見ていたかもしれません。
三池炭鉱の由来は囚人の強制労働から発し、その根幹をずっと抱えてきたという指摘と、炭坑の不正に対して「地下だから、見えないから、何でもできる」と評していたのが印象的でした。
『三池移住五十年の歩み』等は国会図書館デジタルコレクションの送信サービスで閲覧可能です。
三井船舶の生きた時代の三井三池炭鉱の話です。
2023-08-20読了

感想

『マーダーボット・ダイアリー』二次創作小説を途中まで書きました。小説置き場に置きました。長めにしたい。