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喫水はまだ甘くまだ浅くある

津崎のメモ帳です。絵ログ、お知らせ、日常など。

No.1040

#「時代の横顔」(企業・組織擬人化)

……ねえ、日本海軍さん。あたしにはできる。あたしにはあなたの正義を否定してあげることができる。でも、あなたが頑張って守りたかったものがなんなのか、一緒に考えてあげることもできる。あなたのなにが正しくて、なにが過ちだったのか、ということを理解してあげられる。あなたが八十年前に誰からもされなかったし、してもられなかった……距離感、というもの、を、あたし、は、保つことができる。できる。できる。できる……。二十歳ちょいのふざけた女から。普通の人間から。普通の距離で。ツッコミでも、ハグでも、何でも。ほんとうはそれができたんですよ。……できたはずなんだ。でも、その時にはできなかった。彼の語ることに反論も肯定もできないまま、もやもやしたまま、戦争みたいにクーラーの主導権を奪いあうことしかできなかった。あたしは彼のことをなにも知らなかったから。一つ屋根のした共にあったあたしたちは、日本海軍のことも軍艦のことも語るすべなく、ただ生活するしかなかった。でも、生活をするという人間の……当たり前の生き方が……あれが彼が滅んだあと、……の、なにかひとつの救いになって、い、ればいいと思いました。あたしは話はできなかったけれど、……この国に空襲とかさ、ないじゃん?今のあたしと彼に、爆弾は落ちてこなかった。……彼は八十年後の戦争がなくなったこの国の今を、どう思ったのかなぁ。

小説

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