喫水はまだ甘くまだ浅くある

津崎のメモ帳です。絵ログ、お知らせ、日常など。

No.341, No.340, No.339, No.338, No.336, No.335, No.3347件]

折しも、一八九〇年代に急速に近代化した日本は、東南アジアの要所を結ぶ自前の海運会社をもつまでになっていた。密出国者や移住者の乗客が増え、利益を得たのは人買い商人と船会社であった。そして、シンガポールの不衛生な裏通りに閉じ込められた移住者として、からゆきさんは、外貨送金によって日本の経済に貢献することになった。

/『阿姑とからゆきさん』「終章 娼婦たちの人生の再現」
#「大脱走」(企業擬人化)

引用,企業・組織擬人化

iPhoneでこのサイトを見ると、妙に文字が太い。どうにか修正したいです。

わたしは本書において、個々の人や集合的な群像について、またかの女らの人生がいかに紡がれたかについて、できるだけ自然にまた愛情をもって語った。まるで、オヨシ、オイチ、ドゥヤ・ハダチやその他大勢の人びとが、一歴史研究者の「屋根裏部屋の友だち」であるかのように。いろいろな意味で、本書に登場する多くの人物には弱点があり、その希望と絶望が固くもつれており、幸せを求めていたにもかかわらず、夢は破れてしまった。逆説的ではあるが、女性たちが跡形もなく記録から抜け落ちたようなとき、かの女らが歴史研究者たちを悩ませる致命的な選択をしたことに、わたしは気づかされた。

/『阿姑とからゆきさん』 「日本人読者への「序文」」

引用

 これも哀れなふねなのだ、とあるぜんちな丸は思った。あるぜんちな丸の妹同様、かつて受けた愛を忘れられないでいる。再びあの愛情を得られないからこそ積極的に捨て去ろうとしている。自ら進んで捨てることで主体性を確保しようとしている。足掻き、苦しみ、悶えている。今持ちえている(ので、あろう)軍艦の威容を誇ろうとする。わが妹とは違い、貨客船新田丸の姿を留めたまま沈没するという栄誉を得ることはなかった航空母艦、冲鷹。
#「海にありて思うもの」(艦船擬人化)

小説,艦船擬人化