- FA『マーダーボット・ダイアリー』(9)
- おやしお(初代)(6)
- 艦船擬人化「ぼくの小さな神さま」(5)
- ペリヘリオン号(5)
- マーダーボット(5)
- 氷川丸(4)
- こくりゅう(4)
- なるしお(3)
- シーフレンド7(3)
- 愛国丸(3)
- ずいりゅう(3)
- 日本郵船(2)
- ミンゴ/くろしお(初代)(2)
- くろしお(初代)(2)
- そうりゅう(2)
- 大阪商船/商船三井(1)
- 日本海軍(1)
- 飛鳥Ⅱ(1)
- 共同運輸会社(1)
- 郵便汽船三菱会社(1)
- ワフー(1)
- おおしお(1)
- ちはや(初代)(1)
- FA「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」(1)
- 新田丸/冲鷹(1)
- 春日丸/大鷹(1)
- 橘丸(1)
- グラシン(1)
- 護国丸(1)
- 報国丸(1)
- エンタープライズ(1)
- ぶら志る丸/ぶらじる丸(1)
- アイリス(1)
- 平安丸(1)
- 高雄(1)
- うんりゅう(1)
- くろしお(2代目)(1)
- 浅間丸(1)
No.61
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熊谷空襲というほぼ唯一の経験を、埼玉はまるで不良が軽犯罪を隠すように、自虐的な傷か自慢か何かとして胸に秘めていた。江戸時代を越えればいっそう薄くなる年表が示すのは、埼玉は近代の参加者にはなれなかった事実だった。もちろん出征する兵士を見送った。還って来たあまたの死があった。自分の身の上を走り去っていった多くの人びとがいた。でもそれで終わりだった。
それを軽微な損失と誇ればいいのか、別のところの(それこそ帝都東京などでの)末端の歯車だったと自分を責めればいいのかわからない。ただわかるのは、自分が主体となった戦争経験は熊谷空襲だったこと。埼玉は戦場ではなかった。南洋へ大陸へ送り出す港も海も持たなかった。でも、空襲は戦争のひとかけらで、戦争は近代の申し子だったから、戦争と埼玉とが交差したあの瞬間だけは、埼玉も近代の参加者となった。