架空反戦記

歌人とは時には戦争讃えつつ時には憎む　八十年持つ
形容し飾りたてるが生業の我がうた武力に無力を是とする
歌会のお題は戦争、死、あと悲劇　情動は強く言葉も強く
とはいえどノンポリ貫く強さなく言及すれども実感はなく
*info#感想返歌 『短歌研究2022年05月号』*hide

孤独は幸福にとても似ている　背合わせの二つがもたらす恍惚がある
これが自由なんですか二値化した人間しかない価値しかない
犠牲者と迫害者は常ともにある引っ張りあって倒れあって
飛行機に乗りて祖国のために燃ゆ命のともしび歴史となりて
花束を手繰(たぐ)、幸せはここにある　ライラックは藍(あお)あざやかな藍
*info#二次創作短歌 『セカンドハンドの時代』*hide

演劇で震えている手は緊張にあらず不足の酒の中毒
セルビアの憧れつねに向かいおり「ロシアは倒れぬモスクワは死せず」
音楽は好きだ偉大だ喜びも地獄もかき消す何も聞こえず
ドイツ語をしゃべれないことしゃべれないのにしゃべること占領地の咎
*info#二次創作短歌 『アンダーグラウンド』完全版*hide

思い出を共にしていた隣人は加担者でしたみんなで犯した
恃むべき理念と私の一体は素晴らしき哉生捨てて尚
人間は戦争よりも大きくて愚かしくある人間である
本が捨てられていた！失望だった文学は決して救わず我救われず
*info#二次創作短歌 『セカンドハンドの時代』*hide

征服の途中と打って変換し削除「征途」は交差の歴史
*info#二次創作短歌 『征途』*hide

トナカイの曳く橇は雪かき乱し一引きをかく我進みゆく
神さまは関係ないだろ現実と理由の間に俺が立ってる
武力こそ万能である父親が軍が国家が囁いている
塹壕のなかには空虚が広がってそこなら俺も主役になれた
*info#二次創作短歌 『ゴールデンカムイ』17巻*hide

ごく淡い思い出なのですケーキすら濃いと感じるほど味気なく
愛情も友情もなくただあった、一緒にあった、それでよかった
偉大なる世紀は私に大金と多くの孤独を与え潰えた
赤と呼ぶには鮮やかで白色と呼ぶには他人事(ひとごと)あの菓子の色
*info#二次創作短歌 「グランド・ブダペスト・ホテル」*hide

航跡はいつしか祖国に通ずもの朝日は東より出(いづ)るもの
*info#感想返歌 『あたらしい朝 ２』*hide

あたらしい朝に続くその先は希望か地獄か航跡長く
*info#感想返歌 『あたらしい朝 １』*hide

建築はすべての哲学人間が歴史を歩んだ知識そのもの
*info#感想返歌 『ジブリの立体建造物展 図録<復刻版>』*hide