「聖書には書かれていたわ『信ずことやめたものから沈んでいく』と」
#傾艦短歌 *hide
 浅間丸
人間のように笑いて人ならぬことを自分で憐れむときに
 新田丸
 強くあることは犯されぬこと我が「領土」固持し犯すは彼らの領域
 八幡丸
感傷も情熱もなく潔く艀のように静止する我
 春日丸
得ることのなき栄光を胸に秘めただ粛々と波を切るとき
 報国丸
選ばれし者と思う屠られるよりも屠るを幸福として
 愛国丸
愚直であることは素晴らしきこと逡巡も悔いも全てを亡きものとして
 護国丸
うつくしき我を見よ我この姿誇りに思い艦の世をゆく
 あるぜんちな丸
一輪の花を野端に見つけゆく海でも同じ世は変わりなく
 氷川丸
忘れたい忘れたくない逡巡が飽和に至る淡き現在
#傾艦短歌 「幸福について」*hide
一引きの航跡のために我はあり戦火も息も波を揺らして
二引描く旗を見よ我婀娜らしき笑みを浮かべて名を名乗るとき
三度引く汽笛を鳴らして後進は今の時世にできるはずなく
四は忌言葉、私たち縁起を担ぎ感情の儘に流され民族の船
五度は引く亡き僚船の声々を無視して尚も船団は往く
#傾艦短歌 「航海の回数」*hide
船舶は国土の延長 美しく装えばまたお国の誉れ
#傾艦短歌 *hide
浮き沈みしつつ無様に足掻きたりカルネアデスの船板の船
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愛國の文字鮮やかに映える船特設巡洋艦蛮勇な姿
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愛することは支配すること使役するふねを思へば愛おしき吾子
#傾艦短歌 *hide
往くことを征くと言えるが花のうち重油(あぶら)の無き浜白く眩く
#傾艦短歌*hide
そもそもが植民地たり我が船は伏目で頷き航跡を往く
#傾艦短歌 *hide
「秘すれば花よ貨客船は」船底の濁る空気も身分差別も
#傾艦短歌 *hide

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