戦艦は理念を語れども重油なき身の係留の海
#傾艦短歌 *hide
犯罪者、放火犯と呼ばれぬが戦時の良い事、火が舞う港
#傾艦短歌 *hide
水底のふねはひとしく魚たちの命を抱えて無言の栄光
#傾艦短歌 *hide
黒白の姿はかつて紅の線に染まりしうつくしき生
人間の遺影のように飾られしあまたの船らのかつての航跡
「ああ……そして、みんな沈んでいったのよ。みんな……綺麗な海になったの、」
人間の苦悩の何も関せずの遺影の船は思い出となり
氷川丸語りて曰く「死にきれず、私はここに飾り損なれ…」
#傾艦短歌 二十世紀の死者*hide
くれないの花を咲かせてふねたちは神話になりて人に語られ
#傾艦短歌 *hide
我もまた沈みゆくのだ、群青を身に浴びながら滅び逝くのだ、
#傾艦短歌 *hide
戦争は世の常人の常なりとふねらも同じ人間(ひと)の愛し子
#傾艦短歌 *hide
「ふねを我が墓場とするは死ぬ者の特権だろう、」(まるで、心中) 
#傾艦短歌 ぶらじる丸と*hide
軍艦のさだめを逃れるために乗る逃避の船の果てなき旅路 
#傾艦短歌 金剛
そうそう!きょうだいの話でしたね。話始めるととりとめないですが、例えばそう、何回か、きょうだいで銀座に行きました。パーラーや、買い物とか。なんだか、人間になれたみたいでした。あの子たち、進水したときよりいつの間にか私よりずっと大きくなってたんですよ。軍服を着ているのを毎日見ていると気づかなかったのですが。比叡も霧島も背が高いし、榛名だって女にしては背が高い、おまけに彼らは茶髪で私は金髪ときたから、とても目立つんです。だから、行けたのは数回でした。大半は、もっと静かなところや、艦体の近くの港町でお茶を濁したり……。もったいないことをしたわ。私たち、寿命が短いと決まっているのだから、いくらだって羽目を外してよかったはずなんです。でも、だめなの。だって、私たち、普通の人間でも容貌でもなかったし、なによりそう、軍艦なんですもの。(沈黙)……比叡や霧島と腕を組みながらふと、そんなこと思ったこともなかったのになぜか思いました。なんででしょう……。ああ、このまま、洋装のまま汽車に乗って、どこか遠くへ行けたらなあ……って。軍艦に戻りたくない。切符を買って、どこか遠くへ。それこそイギリスまで行ってもよかったんです。海を渡って。ふねに乗るんです、軍艦が(笑う)、軍艦であることをやめるために……。きょうだいでずうっといるために。私たちまだ二十と数よ。人間なら七十は生きられるわ。戦争で沈むなんて馬鹿げてる。私たちはまだそのとき二十と数だった……私たちはまだ……私たち…………(いい続けてふいにやめる、沈黙)*hide
「嫁ぐとは凱旋なき出征」海軍に行けと言われりゃ三歩引き
#傾艦短歌 *hide

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