艦船/〃擬人化 「春のまひる」解題の解題/あえて明るい声であの過去の話を 「春のまひる」という連作漫画を描いている。船舶の擬人化の漫画で、貨客船鴨緑丸をめぐる話だ。 サイトに単独ページを拵えてある のだが、この際、そのページにも鴨緑丸の船歴を掲載してみた。内容をいかに記す。 貨客船「鴨緑丸」 大阪商船の大連航路(日満連絡船)用の黒龍丸級貨客船2番船。1937年4月27日進水。進水式の予定時刻より4時間早くに勝手に滑り出し、進水してしまうというトラブルがあった。大阪商船の社長は「母体を出るのが待ち切れずお産が早かったのだからお目出度いことではないか」と長崎造船所を許したとのこと。和辻春樹設計によるスマートな船体と瀟洒な内装が評判だった。 1943年ほどまでは貨客船として航路にあった。1944年12月、陸軍の輸送船としてマニラへ貨物と将兵を輸送。復路にて付近の日本民間人・遭難船員・捕虜らを乗せて航行中に航空機による爆撃にあい、戦没。鴨緑丸の旅客の定員は約800人(+乗組員)であったが復路時には3500人を乗せていた。鴨緑丸に過密状態で乗っていた捕虜はこの爆撃と、その後日本へ行くまでの道行、日本の収容所での劣悪な環境や虐待などで多数死亡したため、戦後に戦争犯罪として問題となった。鴨緑丸の名は「地獄船」(劣悪な環境下にある輸送船)の代表格として知られている。 本物語は、鴨緑丸が地獄船として記録されている事実と、別の長き航跡もあったにも関わらず地獄船以外の何物でもないとしか思えない現実への怒りによって描かれた。 とりあえずこれを記載して、やはりこの文章は要らないんじゃないかという改めての想いがある。せめて、なにか別の文章のほうがいいのではないか。 あるいは私はこの文章を載せて何を達成したいのだろう、とも改めて悩んでしまった。この船歴とそれへの想いは着物の裏地みたいにひそめておくべきなんじゃないか。なにより私が徴用船を描くことの中に潜んでいる、死体蹴りというべきか、ネクロフィリア的な欲望が滲んでいるのではあるまいか……。 あえて鴨緑丸の明るい話がしたい。それが主題となっている漫画なのだ。あえて明るい声で鴨緑丸の名誉の話がしたい。名誉もちゃんとあったという話をしてあげたい。現状掲載してあるけれど、早めに撤去するかもしれない。それともしないかもしれない。この船歴もたしかに鴨緑丸の航跡なのだから、それを取り除くことだってできない。なにより私自身それをしたくない。鴨緑丸を否定していることになる。その事象を何かのケガレみたいに扱うことになる。 すべての船歴に触れていくこと。それを求めていきたい。ただ触れ方というものがある。フィクションはいろいろな部分を切り取ったり引き延ばしたりできるのだから。 (追記※今現在での話になりますが、文章は前半のみになりました) #「春のまひる」(擬人化)
「春のまひる」という連作漫画を描いている。船舶の擬人化の漫画で、貨客船鴨緑丸をめぐる話だ。
サイトに単独ページを拵えてある のだが、この際、そのページにも鴨緑丸の船歴を掲載してみた。内容をいかに記す。
とりあえずこれを記載して、やはりこの文章は要らないんじゃないかという改めての想いがある。せめて、なにか別の文章のほうがいいのではないか。
あるいは私はこの文章を載せて何を達成したいのだろう、とも改めて悩んでしまった。この船歴とそれへの想いは着物の裏地みたいにひそめておくべきなんじゃないか。なにより私が徴用船を描くことの中に潜んでいる、死体蹴りというべきか、ネクロフィリア的な欲望が滲んでいるのではあるまいか……。
あえて鴨緑丸の明るい話がしたい。それが主題となっている漫画なのだ。あえて明るい声で鴨緑丸の名誉の話がしたい。名誉もちゃんとあったという話をしてあげたい。現状掲載してあるけれど、早めに撤去するかもしれない。それともしないかもしれない。この船歴もたしかに鴨緑丸の航跡なのだから、それを取り除くことだってできない。なにより私自身それをしたくない。鴨緑丸を否定していることになる。その事象を何かのケガレみたいに扱うことになる。
すべての船歴に触れていくこと。それを求めていきたい。ただ触れ方というものがある。フィクションはいろいろな部分を切り取ったり引き延ばしたりできるのだから。
(追記※今現在での話になりますが、文章は前半のみになりました)
#「春のまひる」(擬人化)