ぼくらのさだめ1:「ぼくの小さな神さま」

 くろしおが語って聞かせたところによれば、太陽と星の違いは――まあ明らかに明らかっちゃ明らかなんだけど、太陽と違って、明るいときには見えないが、暗い夜空の上ではきらきらと一等輝くのがお星さまだという。えっ、だからなんなの話が見えないよおじいちゃん、とおやしおは彼に聞いたが、だれがおじいちゃんだこのバカと言った後の彼の答えとしては、星は暗い時に最も美しく輝く、というかの国の星条旗を暗示して言った、ある種の自虐じみた祖国への回顧であり、また自分自身のかつてのあの国での精神的な未熟さの振り返りでもあり、艦歴二十二歳のおじいちゃんの説教じみたお話だった。あるいは、くろしおは人魚姫に若干飽き飽きしていて、なんとなーく別の寓話の話でもしたかったのかも知れない。星は暗い時に最も美しく輝く。星は暗い時代に最も美しく、輝やかしく見える。くろしおはその「暗い時代」を――戦争の短い四十年代、太平洋戦争の束の間の艦生を指して言っていたのだが、おやしおはそんな小難しいことなんか全然聞いちゃいなかったしすぐに忘れた。おやしおは一つのことが気がかりだったからだ。
 今夏、潜水艦「くろしお」の代艦が就役するのだ。

[※後略]

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