艦船擬人化【小説】 小説「軍艦」 #高雄 「戦争そのものが、わたしたちの道具としての存在意義です。政治は人間が考えることであって、わたしたちが考えることは自分の放った弾が魚雷が爆雷が、ちゃんとあたるかどうかだけ。言ってしまえば、戦局ですらそうです。マレー作戦の勝利もミッドウェー作戦の敗北もわたしたちには関係ない。勝利も敗北もわたしたちの存在意義は変えられない。魚雷が刺さる、沈んだらそれで終わり、沈まなかったら次の戦場まで己を温存するまでです。次の海戦で敵の艦――人間の定義する敵です、わたしにとってはわたし以外のふね――に、砲弾を浴びせるだけのこと。艦艇であること。いくさぶねであるということはそういうことであって、愛だとか恋だとか、悲しいだの悔しいだのなんだの、そんな人間の真似事みたいなものは変わり者のやることでした。少なくともわたしはそう思っています。」
「戦争そのものが、わたしたちの道具としての存在意義です。政治は人間が考えることであって、わたしたちが考えることは自分の放った弾が魚雷が爆雷が、ちゃんとあたるかどうかだけ。言ってしまえば、戦局ですらそうです。マレー作戦の勝利もミッドウェー作戦の敗北もわたしたちには関係ない。勝利も敗北もわたしたちの存在意義は変えられない。魚雷が刺さる、沈んだらそれで終わり、沈まなかったら次の戦場まで己を温存するまでです。次の海戦で敵の艦――人間の定義する敵です、わたしにとってはわたし以外のふね――に、砲弾を浴びせるだけのこと。艦艇であること。いくさぶねであるということはそういうことであって、愛だとか恋だとか、悲しいだの悔しいだのなんだの、そんな人間の真似事みたいなものは変わり者のやることでした。少なくともわたしはそう思っています。」