艦船擬人化【小説】 小説「海」 ぼくがまだ海という言葉を覚えていなかったころ、遠くにあるあのうつくしいものを指差して「あれはなに?」と兄に尋ねたことがある。「あのきらきらきらした、とびはねているきれいなものはなんていうの」 兄は「ふねのこと?」と答えた。 「ふね?」 「うん。ぼくたちと違って海に浮かんでるやつでしょ?」 兄はそう笑った。「海」と呟き、それをじっと見つめたぼくのことなんてつゆ知らず、兄は愉快そうに笑ながら小さく歌いはじめた。 「うーみーは、ひろいーな、おおきーいーなー……って、もしかして『とびはねてるきれいなもの』って海のこと?」兄はおどろいてぼくに尋ねた。ぼくは”海”という言葉に魅入られ、呆然とただそれを眺めていた。「海……」 「……うん。綺麗でしょ。海って言うんだよ。でも、その綺麗な水面はぼくたちの生きる場所じゃないから」 #そうりゅう #こくりゅう
ぼくがまだ海という言葉を覚えていなかったころ、遠くにあるあのうつくしいものを指差して「あれはなに?」と兄に尋ねたことがある。「あのきらきらきらした、とびはねているきれいなものはなんていうの」
兄は「ふねのこと?」と答えた。
「ふね?」
「うん。ぼくたちと違って海に浮かんでるやつでしょ?」
兄はそう笑った。「海」と呟き、それをじっと見つめたぼくのことなんてつゆ知らず、兄は愉快そうに笑ながら小さく歌いはじめた。
「うーみーは、ひろいーな、おおきーいーなー……って、もしかして『とびはねてるきれいなもの』って海のこと?」兄はおどろいてぼくに尋ねた。ぼくは”海”という言葉に魅入られ、呆然とただそれを眺めていた。「海……」
「……うん。綺麗でしょ。海って言うんだよ。でも、その綺麗な水面はぼくたちの生きる場所じゃないから」
#そうりゅう #こくりゅう