1-2企業・組織/企業・組織擬人化


  • 企業擬人化創作漫画「大脱走」

    1948年 占領下の日本郵船と戦後初の新造貨客船舞子丸の再出発のはなし。

    Company & Organization Gijinka Count of Life “Escape from the old system” The Great Escape

    「たしかに占領軍の海運政策は苛酷であった。日本海運を根絶やしにする意図かと思えた。日本の商船隊は財閥と結びついて世界を跳りょうし、その軍事力増強に大きな役割を果たしたというのが、米英など連合国の認識であった」『二引の旗のもとに』


    第1話「ささやかな顛末」――日本郵船
    第2話「嵐の中」――日本郵船と大阪商船
    第3話「もっとも燦爛な時」――日本郵船
    第4話「潰えた幻影」――日本郵船
    第5話「多くの面影」――日本郵船
    第6話「いま再びの地獄」――日本郵船と舞子丸
    第7話「それから」――日本郵船と大阪商船
    あとがき「あとがき、あるいは長い言い訳


    解説「世界のさみしさ

    番外編1話「ゲイシャ・ボーイ」――日本郵船
    番外編2話「解纜遠し」――氷川丸

    小話1「最後の朝」――郵便汽船三菱会社と共同運輸会社


    pixivシリーズ「大脱走」(pixiv):合冊版(最終校正版)「大脱走」(pixiv)

    「大脱走」の覚え書き(解説など)

    「大脱走」参考文献リスト(一部)
    『大脱走』各巻表紙
    企業擬人化漫画「大脱走」4話でこだわったこと
    同人誌『大脱走』(合冊版) [詳細][booth][pixivサンプル]

    :企業擬人化創作漫画同人誌『大脱走』(合冊版)『ティアズマガジン151』の「プッシュ&レビュー」で紹介していただきました。


  • あとがき、あるいは長い言い訳:「大脱走」あとがき

     この物語は未来への再起の話です。
     そうあった、敗戦を迎えた海運会社を擬人化創作としてえがいています。
     精神的また物質的喪失から立ち直るまでの過程を、同じくそうあった敗戦後の日本郵船に投影してこの物語をえがきました。
     戦時下の商船を思うとき、そのあとの戦時補償特別税のこと、そのあとの長い敗戦後をいつも考えてしまいます。

     幸せか悲しいかの二極化ではなくその波間を揺蕩うような物語を目指しました。その曖昧さは、激烈なショックやトラウマが襲った時に呆然とするような、「空白」との類似を感じるからです。またその両者は似ているだけで明確に違うことも意識しました。
     また今作は意図をもって黄色人種を黄色に塗るよう努めました。戦争の終わりを特別な意図による以外は「敗戦」と表記し、またその事象をそのように扱いました。
     敗戦直後の彼らは戦争を総括できていなかったのではないかという見解に立ち、国策海運が惨禍と報復を招いたという苦痛と共にあった、「東京裁判は勝者の裁き」だという一定の日本人の解釈を反映することも忘れなかったつもりです。
     戦争を俯瞰できなかった者たちの群像劇を私自身も俯瞰せずに描こうと心掛けました。戦後80年という地点に立つ人間の感情に選別、あるいは裁きを加えないよう努めました。また外野から他人事に、他人の会社に対して図々しく説教するような物語はなるべく避けようと一定の自律は行いました。
     敗戦という物質的に何もない状況を美術的に美しく描こうと努めました。またそれをあえて美しく描くことについての意味は弁えているつもりです。この状況を「全てを失った悲劇」とえがくか、「長くあった資本と帝国の末路」とえがくかを逡巡し、常に自問しながらえがきました。所々意図しなかった私の失敗も見えるでしょう。倫理的に美しくないはずなのに、感情的に「美しく」なってしまった部分も多々あります。
     自律したうえで自律しえなかった、多くの越権行為をこの物語では行ってしまいました。

     終戦の時、日本海運は多くのものを失いました。その再建を思えばいまは苦労話と「美談」の一つです。でもそのまま潰えて終わる可能性があったこともまたつよく思ってしまいます。
     その喪失に反発し、受容し、再起する過程の話を描きたかったのです。

     私はこの10年間、いつ死んだとしても怖くなかったのですが、この漫画の連載中に死んでしまったら「大脱走」が完結しないのだと思うととても怖かったです。これは長い人生の中で初めてのことでした。そういう事なんだと思います。
     最近はいままでに失ってきた多くのものを思い出します。

    津崎

     

    企業擬人化「大脱走」>あとがき「あとがき、あるいは長い言い訳」