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No.19

サバイバー

 その数十年後、氷川丸は周りの小さな船舶たちに、夜は絶対に明かりを灯さないようにと厳しく言った。夜に氷川丸を訪ねては、喫煙室にライトを照らすことを求める遊覧船やフェリー船たちに対して禁じ、懇願し、要求しては厳命した。彼らに事の理由が理解できないのはわかっていた。だが、知らないで済まされるのか?夜に明かりを灯す事がどれほど危険なのかなんて。あの暗闇の中からどれほどのアメリカの潜水艦がこちらを見ているか、いつ魚雷が飛んでくるかわからないじゃないか、どれほど一瞬の油断で全てが変わってしまうか、わかるわけないじゃないか。運命というものが。犠牲や生死が。愛する者たちが。自分の船生が。

#氷川丸

艦船擬人化,【小説】

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