- FA『マーダーボット・ダイアリー』(9)
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- 艦船擬人化「ぼくの小さな神さま」(5)
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- マーダーボット(5)
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No.15
*
本深宇宙調査船および教育船を、ペリヘリオンと命名する。
命名者が厳粛にいう。本船はすぐにその意味を検索した。Perihelion――太陽軌道の近点。
太陽に最も近い惑星または彗星の軌道の点。
太陽にもっとも近い船。
シャンパンボトルを船首で割ることの由来や意味や起源は、進水前である本船の乏しいデータベースではとうとう知りえなかった。目的と意味が不明で、理解しがたい祝福だった。本船はこの後、人間たちの多くの奇行を目にすることになる。
人間たちはひそかにその瞬間を待っている。
一瞬の静寂。
ごく小さなボトルが弾かれて割れる音は、意外と強く反響するという事実は、進水式会場の少しの沈黙を知る者にしか実感できないだろう。
ボトルが割れる。
会場の静寂が割かれる。
人間たちの期待と予兆もまた破裂する。
本船が稼働すると、人間たちは歓声を爆発させた。
風船や鳩が飛び交う。万雷の拍手と歓呼の声、声、声。おめでとうーという誰かの間延びする声がすぐにそれらに掻き消えた。わずかに聞こえる笑い声がなんだか妙にくすぐったかった。ペリヘリオン号!と誰かが本船の名前を叫ぶ。思考の内で本船もちゃんと返事をする(ペリヘリオン号はここにいる)。
宇宙とはどういうところかしら、と本船は考えた。そして乗組員というものも。本船はいまだにどちらも持たない。
それらが幸せなものだといい。素敵で、大好きになるものだといい。大きくて素晴らしいものだといい。本船は期待した。これからの船生に期待した。生まれた存在理由に期待した。深い宇宙に期待した。人間たちに期待した。
本船自身に期待した。
いまだ拍手は鳴りやまない。
#FA『マーダーボット・ダイアリー』
#ペリヘリオン号