良い…と思ったらぜひ押してやってください(連打大歓迎)
鳥山淳ほか『沖縄・問いを立てる 5 イモとハダシ 占領と現在』

20250903201054-admin.jpg

(Loading...)...
(Loading...)...
#琉球/沖縄 #第二次世界大戦 #沖縄戦

『3 攪乱する島』ほど凄まじくないものの良書。

論考「集団就職と「その後」」が興味深かった。
ザックリとまとめると(あくまで拙いまとめのため、差異は拾えていない)、「沖縄の一部に『貧困層の本土移住者』を嫌う人々がいる」こと、その属性の複雑さを解いたもの。
「日本人」とは本土人のことなのか?ナイチャー(と沖縄で呼ばれる集団)は本土の日本人だけを指すのか?本土出身の在沖縄の貧困層が沖縄で「わがまま」を言うことの嫌悪は、ナイチャー=いわゆる経済的ミドルクラスという意識からきているのではないか?……などの、無意識の了解が解題されている。
漫画
朝田ねむい『鷹虎くんとオメガたち 1』
(Loading...)...

 オメガバースは特に好きでもそこまで嫌いでもないが、人間の「本能」の話ばかりされると嫌になる時もある。ただ、アンチテーゼとしてのオメガバースものがあることも知っている。
 どちらかというとこれもアンチテーゼオメガバース(?)であり、フツーに漫画として面白かったです。絵も素敵だし話も面白い。ナチュラルに差別発言が出てくるところがむしろの差別へのアンチテーゼっぽい。朝田ねむい先生の漫画は良いぞ。
 オメガバースの世界って火炎瓶がよく投げられてそう、と常々言っていたが、オメガバースって徴兵制を敷くのも大変そうだよね。オメガバースは結局「体制」と「反体制」にまつわる話なのである。
 
三島康雄『三菱財閥史 大正・昭和編』
(Loading...)...
#日本史 #日本近代史 #第二次世界大戦 #アジア・太平洋戦争
#三菱 #財閥 #日本郵船 #三菱商事 #三菱重工 #三井物産
#デジコレ個人送信限定で読める

 三菱初心者には良い感じの本。三菱の背負った近代日本の業……やね!というのが分かりやすく書かれていてよい。
 三菱という企業の背負ったもの、とりわけナショナル的な精神に触れられていたのが印象深かった。
 三菱好きなんだけど三菱ホントに好きか?という感じだし三菱が好きという言い切りは極めて危ういしキモいとも感じるが私はやっぱ日本史上における三菱が好き。功罪含めて。

 追記・「三菱が好きであることへの逡巡がある」という話でしかないのだが、「イジリ芸」みたいにはならないようにして行きたいです。
テレサ・ハッキョン・チャ『ディクテ 韓国系アメリカ人女性アーティストによる自伝的エクリチュール』
(Loading...)...
#日本史 #日本近代史 #朝鮮/韓国・北朝鮮 #日本語 #帝国/植民地
日本の満洲侵略に遭った母をもち、韓国軍政を逃れアメリカへ。パリ留学を経てニューヨークで暴漢に殺される―植民地以後、母国語を奪われた女性が、複数の言語と図像を往還し、自らの生と現代世界史を一冊に凝縮した究極の実験的テクスト。アメリカにおけるポストコロニアル、多文化主義、ジェンダー研究の必読書。

 個人的な「成功体験」の話から始めます。日本の古本屋で「探求本」としてこの本を登録しておりました。「どうせ来ないし、見つかっても4万円とかなんだろな~。まあ出品が出てるのを眺めるだけで面白いし登録しとくか……」みたいな気持ちで登録していました(まるで探求してない)。
 そしたらある日、日本の古本屋から「2000円で出品しはじめたよ~ん」とのメールが来ました。5度見くらいしてしまった。本の元々の定価が2000円じゃなくて…?心臓をバクバクさせながら、そのメールから3分後くらいに爆速で落札したのがこの本になります。長らく狙っていたので嬉しい……というかなんで2000円だったのかは謎で、怖い(呪われている……?)。

 散文みたいな感じだったり引用だったりの本です。なんとも内容自体を説明し難い本ですが、とても良い。絶版なのが大変残念です。


ある人たちは年齢を重ねることを知らない。ある者は歳をとらない。時が止まるのだ。時はある者たちのために止まるだろう。とりわけ彼らにとっては。永遠の時。全く歳をとらない。時はある者たちにとっては凝固する。自らを再生産し、増殖することによって魂から分離された囚われの像とは違って、彼らの像、彼らの記憶は腐食しない。彼らの相貌が喚起するのは、後光を帯びた美しさでも四季折々の自然の盛衰の美しさでもない。喚起するのは不可避的なものではなく、死ではなく、死に-つつあるということ、なのだ。
/「クリオ 歴史」

モーリス・パンゲ『自死の日本史』
講談社文芸文庫(2011)のもの。
(Loading...)...
#日本史 #日本近代史 #第二次世界大戦 #アジア・太平洋戦争
#精神史

 抒情というか感傷的ともいえる日本史に寄せる本、日本史を語る本。
 愛情というより愛惜を感じる。「日本史の本」と呼べるかは別として、一つの文としてたいへん良い。

一九三〇年から一九三五年の間に生まれ、国家の奨励を受けて出生率の増大していた時期に生を享けたこれら若い自殺者たちは、敗戦の当時、十歳前後の年齢に達している。彼らは他の子供たちと同じように戦争中の国粋主義的風潮に心をふるわせ、太平洋戦争という叙事詩的世界の中で想像裡に出征した父親につき従う。
 その叙述詩的昂揚のあとで、彼らは英雄であるはずの父親が、死んだのでなければ戦いに敗れて、現実世界に戻ってきたのを見る。それから十年後、自分たちが大人になり、競争社会のなかで一人前にやっていかなければならなくなったとき、そして小さな利益を求めてあくせくと働く始まったばかりの繁栄のなかで何かの困難、彼らの失敗に出会ったときに、彼らをとらえたかもしれない嫌悪感を、どのようにして彼らは克服すればよかったのだろうか。その時、過去から聞こえてくるあの呼び声が、夢の世界に響きわたるあの悲劇的なヒロイズムの声が、どれほど彼らの心にしみわたったことであろうか。無償の奉仕という栄光のためにあれほど若くしてかなたの世界で死んでいった理想の父親へと、あるいはまた、自分自身が今到達した年齢の時にはすでにこの世から姿を消していた兄たちへと、彼らの思いは動いていく。理想の父や兄に彼らを一体化させようとする過去へのこの憧れを、交換価値の支配する砂漠のようなこの世界の中で、いかにして彼らは振り捨てればよかったのか。
 こうして五〇年代を通じて、日本経済が離陸しようとしていたまさにその時期に、数千人の若者が、悲しくも過去を忘れ得なかったがゆえに、死んでゆく。
漫画
奥瀬サキ・目黒三吉『低俗霊DAYDREAM 1』
(Loading...)...
#広義の公娼制/買売春

『低俗霊』は一つの「哲学」というか美学。
 何がすぐれているのか考えていたけど、ふわふわしたもの(ここでは心霊)を高度な具体性を持って描いている所だろうか。
 ちなみに主人公の「口寄せ」は東京都庁環境局の生活対策課から依頼される。課は一般市民の「忌物苦情相談」に応じているようだ。
 時おり住宅局住宅経営部保全課や警視庁と管轄で揉めたり協力したりしていてそこもジワジワと来る。
 このような漫画をもっと読むために乱読をして発掘したいきたいと思える漫画。電子書籍も捨てたものではない。
映画
エミール・クストリッツァ「アンダーグラウンド」

(Loading...)...
#ユーゴスラビア #セルビア #世界史 #第二次世界大戦

 ワ…「アンダーグラウンド」と10年付き合ってるってこと?びっくりする。

 初めて観たのはTSUTAYAで借りたDVDで、でした。当時ユーゴスラビアが気になっていたので、おすすめ文を見て借りた記憶があります。
 もうユーゴスラビアに興味あります!とか関係ないよね。映画としての一つの到達点なので……。
 普通のノートパソコンで観ました。初見では上手く呑み込めなかった部分もありました。あとからじわじわ来ましたね。「なんかとにかくすごかった」所見の感想はそんな感じです。

 現在クストリッツァ監督は親ロシア・親プーチン派として非難を浴びています。
 Xの日本の反応を見て大変興味深かったのは「『アンダーグラウンド』であんなに力強く戦争の愚かさを描いたクストリッツァ監督がなぜ…」という投稿がいくつか見受けられたことでした。
「完全版」を観ればわかるように、クストリッツァ監督のロシアへの憧憬はすでに元からすさまじいものでしたし、それは西側陣営への嫌悪と表裏一体なのだと私は感じています。
 そして「アンダーグラウンド」で描かれていたのは戦争の愚かさではなく人間の愚かさであり、その人間の愚かさは戦争という装置によって映えたものでした。むしろ戦争は物語を揺さぶるアクシデントとして積極的に導入されていた感があります。
 あとちょいちょい西側(第二次世界大戦でいえば連合国側)や国連・ユニセフなどへの皮肉(「ドイツの空襲が終わればつぎは連合国だ」という台詞や赤十字旗が何の役にも立っていない戦場の描写など)を見ると、なんとなくあの当時監督がキレられて監督がキレて引退宣言をした背景が見えてくるでしょう。

「アンダーグラウンド」を非政治的な戦争寓話としてしか観れない私たちはすでに遠くに来てしまっていて、じつは私たちはあの小島を見送る側ではなく、小島に乗って見送られて行った側なのではないかと時折感じます。
 
追伸・ユーゴスラビア周辺の歴史に詳しくないため、あくまで偏見にすら近いただの所感です。
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『死に魅入られた人びと ソ連崩壊と自殺者の記録』
(Loading...)...
#ロシア/ソ連 #オーラルヒストリー #世界史
ひとりひとりの人生を飲み込んできたソ連という国家の崩壊のあとに
新しい社会に放り出された寄る辺なき人たち。
自らの死を選ばざるをえなかった無名の人たちの肖像だけをじっと見つめ、
社会主義国家という歴史から消えた巨大な亡霊といま一度向き合うインタビュー集。


 よく読んだ/愛読していたのはもう10年ほど前の話になってしまいます。
 悪く言えば「よく『パッケージ』(あるいは『手入れ』)された悲劇」という感じも漂う本ですが、当時はきもちがささくれた時に『斜陽』『沈黙』と一緒によく読んでいました。
 文句なしの本ですが、ソ連の思い出という意味では、この本が一部改稿されて発行された『セカンドハンドの時代』をおすすめします。
石田衣良『うつくしい子ども』
(Loading...)...
※私の読んだものは文庫版旧装幀で、そちらの表紙のほうが好みです。
#小説

 いわゆる加害者家族ものなんだけど、私が読んだ2014年当時に「加害者家族」というものは今ほど語られていなかったような気がする。気のせいかも知れないが。
 個人的に好きな話。ただ、いわゆる「子どもの頃に読んだから鮮明に心に残っているだけで大人になって読んだらすぐに忘れる本」なタイプかもしれない。でもやっぱり好きだ。
 石田衣良先生は、私がラノベから一般文芸にチャレンジした小6からの付き合いである。石田衣良先生の小説に救われたかはともかく支えられてきた。

 登場人物が書いた『星の王子さま』の二次創作小説が作中に出てくる(オタクがその意図で書いたものではないので「二次創作小説」とは呼ばれていないが……)。私は『星の王子さま』を読んだことがないので、いつまでも『星の王子さま』を星の王子さまが焼身自殺する話と認識している……。左記の文章が気になる『星の王子さま』ファンは読んでもいいのではないだろうか。私は『星の王子さま』を読まねば……。
兼松左知子『閉じられた履歴書 新宿・性を売る女たちの30年』
(Loading...)...
#広義の公娼制/買売春 #デジコレ個人送信限定で読める
婦人相談員として30年間、新宿の売春を見つづけてきた著者が、多くの実例を示して描く生々しいドキュメント。
 
 面白かったというか、今読めば普通に面白いんじゃないかと思った。読んだのがだいぶ前なのでうろ覚え……。

読んだ観たTOPに戻る