なんとなく戦時下の京劇の映画くらいまでしか知らなかった。のですこし後半にはびっくりしてしまった。が、この映画の本番はその後半、文化大革命あたりの話だったようにも思える。
京劇も蝶衣(レスリー・チャン)美しいのだけど、その美しさ自体よりも、その美しい時代が過去のものとなり、新しく生まれた世代にも古き体制だと馬鹿にされ、あげつらわれ、だんだんと美しくないものが社会的に「美しい」ことになっていくさまが興味深かった。小四への体罰とか、根性論とか、完全にから回っている描写が印象深い。
世代間の断絶がすさまじく、その断絶への悲しみ、また共産主義体制への怒りを感じた。1993年公開、イギリス領香港での制作とのことだが、それでもここまで嫌悪感を描けるのは凄い。中国への好意と嫌悪感。また同じく日本と日本人への当たり前の嫌悪を発露、罵倒をするが人間的尊重も忘れない。
今回は4Kバージョンの映画を観た。
タイトル:「さらば、わが愛/覇王別姫」サラバワガアイ/ハオウベッキ
監督:チェン・カイコー
出演:張國榮(レスリー・チャン)、張豊毅(チャン・フォンイー)、鞏俐(コン・リー)
公開:1993年
製作国:香港
上映時間:172分
視聴日:2023/8/6 映画館にて
※過去記事(2023/8/6)
追記2023/12/24
上記の「人間的尊敬」
- 漢奸裁判で、蝶衣が「日本軍将校の青木が生きていれば京劇を日本に持って帰っただろう」と言うシーンがあり、あれは映画監督のコスモポリタニズム的な見解なのかなと夢想していたのだが、そうではなく、ただ単に蝶衣は京劇以外のものが見えていなかっただけだろう。
- 蝶衣は京劇しかが見えておらず、同胞が罪無きままに大量に銃殺されたあの長い夜のことも、同胞の死体が軍犬に食わされていたことも見えておらず、京劇にしか生きていなかった、京劇の観客として単純に中華民国軍兵士は日本軍より劣っていたという失望と幻滅、そこには京劇の主人公としての視点しかないのだ。
- と思いました。